著 者:伊坂幸太郎
出版社:実業之日本社
出版日:2005年12月15日 初版第1刷
評 価:☆☆☆☆(説明)
著者の2005年の描き下ろし作品。2008年に同じ出版社から「Jノベル・コレクション」というレーベルで、ソフトカバーの単行本も出ている。大学生を主人公とした青春小説。大学生が主人公ということでは「アヒルと鴨とコインロッカー」もそうだが、本書の方が「青春」成分が多く配合されている。
主人公は北村、仙台の国立大学に入学したばかりの男子大学生。物語の始まりは、4月第一週のクラスコンパだ。そこで、鳥井(男)、南(女)、東堂(女)、西嶋(男)の4人と出会う。「俺、鳥井っていうんだ」とか「練馬区から来た、南です」なんて自己紹介なんかしたりして、冒頭から「青春」の甘酸っぱい香りがする。
そして、鳥井のマンションに押しかけてって麻雀はするわ、夏にはこの男3女2で海に出かけるわ、男は合コンに余念がないわ、片思いや告白があるわで、「青春」が加速する。あとは夕日に向かって叫ぶシーンがあれば..と思うが、そこまで行くと冗談になってしまう。
その手前のギリギリのセンで留まることで、「砂漠に雪を降らすことだって、余裕でできるんですよ」というセリフにもリアリティが感じられる。もちろん「砂漠に雪を降らす」リアリティではない。「その気になれば何でもできる」って、あの頃は思えるんだよなぁ、というリアリティだ。
これでは、くっついたり離れたりの恋愛系ライトノベルのようだが、著者の作品だからもちろんこれで終わりではない。犯罪組織との確執を軸としたミステリーあり、著者の持ち味の伏線あり、個性が際立つキャラクターもありで、伊坂ワールドが結晶したような作品だ。伊坂ファンにもそうでない人にもオススメ。
そうそう、著者の作品には作品間のリンクがあることで有名だが、本書にもチラっと「チルドレン」の「あの人」が出てくる。そして「チルドレン」を読み返すと、この本の「この人」がちゃんと出ている。つまり相互リンク。著者は、チルドレンの時点でこのリンクを仕込んだということなんだろうか?
本書で、これまでに単行本として出版されたアンソロジー以外の著者の作品は、すべて読んだことになりました。コンプリート達成!
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今現在「砂漠」読んでいる途中です。おもしろい。
次読む作品は何が良いでしょうか。
3冊(5冊でも)ほど教えていただきたいのですが。
「アヒル・・」「ギャングシリーズ」「死神の制度」
だけしか読んでおりません。
×制度→○精度
naoさん、コメントありがとうございます。
3~5冊ですね。お気に召すかどうか分かりませんが、思いつくままにあげてみます。
伊坂さんの作品には、陽気でキャラや会話が楽しい「白伊坂」作品と、暴力や得体の
知れないものの要素が強い「黒伊坂」作品とがあると言われています。
今までお読みになったのは「白伊坂」作品といっていいでしょう。
その流れで言うと、「チルドレン」最新刊「オー!ファーザー」あたりでしょうか?
「黒伊坂」も試しに、ということなら「グラスホッパー」「ラッシュライフ」は
どうでしょう?
それから「ゴールデンスランバー」これが今のところ、マイベストです。
ありがとうございます。
そういう作品の傾向があるとは知りませんでした。
白ばかりでしたから・・。
「白伊坂」「黒伊坂」ですね。
両面を愉しみたいと思います。
まずは「黒伊坂」から始めます。
参考になりました。
ありがとうございます。