著 者:上橋菜穂子
出版社:理論社
出版日:2003年11月 初版
評 価:☆☆☆☆(説明)
これは傑作だった。「守り人」シリーズ、「獣の奏者」シリーズで、東洋風の独特で圧倒的な世界観を描き切り、アジアン・ハイ・ファンタジーというジャンルをものにした著者の2003年11月の作品。時期的には「神の守り人」の後。「守り人」シリーズですでに人気を博していた著者が、その合間に発表したノン・シリーズ作品ということになる。
主人公は小夜、里のはずれにある森の端で祖母とともに暮らす少女。物語が始まった時には12歳だった。彼女には「聞き耳」という、他人の「思い」を感じ取る能力がある。
もう一人の主要な登場人物は野火、正確には人ではなく霊力を持った狐である「霊狐」だ。隣国の「呪者」と呼ばれる霊能力者に使われる「使い魔」で、命令があれば人を殺すこともある。
ある日、追手の猟犬に追われて逃げる野火を小夜が匿う。普段は立ち入ることのない森の中の屋敷まで逃げ、そこに幽閉されて暮らす同じ年頃の少年の小春丸と出会う。小夜にも小春丸にも本人が知らされていない生い立ちがあり、物語が進むに連れて野火も含めた3人の運命が縒り合されていく。
物語の背景には、領地や水利をめぐる隣国との諍い、同族間の確執、跡取り問題などがある。さらに、この世とは別の世界の存在など「守り人」と通底するものがあり、主人公の小夜には「獣の奏者」のエリンにつながるものも感じる。
代表作になった2つのシリーズに挟まれる格好で、比較的目立たない作品だが、短い分完成度が高いように思う。著者の作品のテレビアニメ化が続いているが、映画にするならこの作品が最適だろう。
本書で、これまでに出版された著者の小説はすべて読んだことになりました。コンプリート達成!
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はじめまして。ブログ村で見つけて訪問しました。私も本のブログを書いていますがYO-SHIさんには及びません。上橋菜穂子さんの作品て児童書に分類されていることが多いですが、ある意味メッセージも含まれていて大人が読んでも十分に満足できる作品ですね。今いろいろ新しいジャンルにも目を向けようと思っているので、また参考にさせていただきます。
someseiさん、コメントありがとうございます。
someseiさんのブログも拝見しました。SFを中心とした
充実した読書ブログですね。私に参考にさせてもらいます。
もし同じ本を読まれたら感想などを教えていただけると、
うれしいです。
「狐笛のかなた」 上橋 菜穂子
「精霊の守り人」の作者・上橋菜穂子さんが送る、中世日本を舞台にした美しい昔ばなし。「狐笛のかなた」
●不思議な力を持つ娘、幽閉された少年。使い魔とされた霊狐。
傷ついた狐・野火を偶然たすけた小夜。
野犬に追われ、飛びこんだ屋敷には幽閉された少年・小春丸がいた。小夜は人の心の声が聞こえる「聞き耳」の才を持つ娘。
小春丸はある理由から屋敷に幽閉されている。
そして野火は、小夜や小春丸の住む春名ノ国と敵対する湯来ノ国の呪者に使える使い魔だった。
この3人の出会いが、やがて両国の争いに影を落…
狐笛のかなた 上橋菜穂子 ハッピーエンドが好き! あらすじ、ネタバレ注意
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