著 者:池上彰
出版社:角川SSコミュニケーションズ
出版日:2009年11月25日 第1刷発行 2010年5月4日 第15刷発行
評 価:☆☆☆(説明)
1年弱前に読んだ「14歳からの世界金融危機。」の著者の新書。書店で新書ランキングの上位になっていた。新書の場合は、売れている(という噂の)本がさらに売れる、という傾向があって、ランキングが中身の良し悪しを反映しないと思っているので、それだけであれば手を出さないのだけれど、「14歳からの~」が思いのほか良かった覚えがあったので読んでみた。
内容は、世界の勢力地図、アメリカの覇権の崩壊とパワーシフト、世界の問題点、日本の問題点、と今の世界を網羅的に説明している。歴史的な流れを踏まえた考察やウラ話的なものも交えてあり、新聞記事より奥行きがある情報が得られる。
「はじめに」で世界金融危機のことに触れ、「ブッシュ大統領以外の世界の指導者たちは、歴史に学んでいました」と書いているように、ブッシュ政権(あるいはブッシュ元大統領個人)には大変厳しい眼を向ける。今世界が抱えている問題のいくつかは、ブッシュ政権の失策が原因だとも読める。(「世の中の悪いこと全部が、自分たちのせいにされる。アメリカみたいだ」(伊坂幸太郎「ゴールデンスランバー」より)という言葉を思い出した。)
その反動もあってか、日米の民主党に対しては肯定的な意見が多い。本書の発行は2009年11月、オバマ政権発足から10ヶ月、鳩山政権からはわずか2ヶ月だ。著者も、新政権には期待を持っていたのだろう。今なら、違うことを書かなくてはならないと思うが。
「知らないと恥をかく~」というタイトルは、見栄っ張りのビジネスパーソンに効きそうな殺し文句。まぁ、知らなくても恥をかくことはないが、どこかで披露するとちょっと得意になれるような話題が詰まっているので、話のネタを仕入れるつもりで買うのなら760円の価値はあると思う。
しかし「上っ面をなでました」というスカスカした印象はぬぐえない。本書の帯に「世界のニュースが2時間でわかる!」とある。「14歳からの世界金融危機。」は「45分で分かる!」というシリーズ。どちらも「お手軽さ」を謳ったことは共通だが、テーマを世界金融危機1つに絞った45分は意外に充実したものだったが、いくつもの問題を扱っての2時間ではそれはムリだった、ということだ。私としては、年金や教育や地方分権など、本書で取り上げた「日本の問題」について、著者の意見をもう少しじっくりと聞いてみたい。
それにしても著者のテレビでの人気ぶりはスゴイ。調べてみたら、古巣のNHKを除いて在京キー局のすべてが、今年になってからバラエティ番組などで、ニュース解説に著者を起用している。テレビ局は「ニュースを国民に分かりやすく伝える」という機能を、自前では賄えなくなっているのかもしれない。
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(たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)
こんにちは^^
先日、書店のベストセラー棚にこの本を見つけました。
最近テレビでよく観ている著者の本ということで、買おうかと思いましたが、内容がどこまで深いのかよくわからず、この次ね♪と自分を騙して、帰ってきました^^
数年前、著者の経済関係の入門書を数冊購入し、その本はとてもよかった印象を持っているのですが、本書はサラッと撫でる分にはいいけれど・・・という感じでしょうか?
やはり、テーマを多く設けすぎると、深く踏み込めないでしょうねぇ。
テレビに出ている池上氏の説明は、政治・経済音痴の私には、とてもわかりやすくて、つい聴き入ってしまいます。
れもんさん、コメントありがとうございます。
たぶん、れもんさんのご想像のとおりの本だと思います。
北朝鮮や中東問題もあれば、子ども手当のこともあって、
国内外の、経済だけでなく政治も教育も社会問題もと、
ちょっと欲張りすぎたかもしれません。
ただ「広く浅く」は悪いことではないですよね。サラッと
押さえときたい、という場合にはいいんじゃないでしょうか。
■書評■ 知らないと恥をかく世界の大問題
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ここであらためて言うまでもなく、世界は目まぐるしく動いている。
丹念に新聞やニュース、ウェブサイトなどの情報を収集し、積極的に把握に努めている方はいいだろう。
しかし、毎日きちんと新聞に目を通すわけでもなく、ニュースはほとんど見ず、…
池上彰『知らないと恥をかく世界の大問題』
知らないと恥をかく世界の大問題(著:池上 彰)
池上彰さんの著書です。
世界全体の政治的・経済的な問題点から、日本経済の問題点を解説してくれています。
最近の潮流である、アメリカ一極集中から新興国経済が活発になっている現状をわかりやすく書かれています。…
【池上さんに頼り切りにならないように】知らないと恥をかく世界の大問題(2)
「自由な選挙を実施すると、イスラム原理主義勢力が力を持つ」。これが中東の皮肉な現実なのです。(128ページより)