著 者:ジョージ・R・R・マーティン 訳:岡部宏之
出版社:早川書房
出版日:2002年11月15日 初版発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
本書は上下巻それぞれ450ページあり、色使いが鮮やかなこともあって、書棚に並んでいると背表紙だけでも存在感がある。それで手にとってみたのだけれど、開いてみて紙面が通常より一回り小さい文字の2段組であることに気付き、さらに圧倒される。これを読み通すことができるのだろうか?不安を感じながら、不思議な魅力に抗し難く読み始めた。
結果的には、さしたる苦痛もなく読み終えた。それどころか「これはスゴイ物語に出会った。」と、上巻の途中で予感し、下巻を読み終わって確信した。もちろん読むのに時間はかかった。その意味では、この前にレビューを書いた「知らないと恥をかく世界の大問題」のように、「○時間で分かる」と「お手軽さ」を謳ったものとは対極にある。
舞台も時代も架空の世界。しかし大陸から海を隔てた南北に長い島、王族や貴族や騎士が数多く登場するので、中世の英国をイメージさせる。特定の主人公はいないのだが、最北の地域の領主であるスターク家が軸にはなっている。
このスターク家の王のエダート、王妃のケイトリン、子どもたちのジョン、サンサ、アリア、ブラン、敵対するラニスター家の次男のティリオン、そして以前に王位を追われたターガリエン家の娘のデーナリスの8人の視点が章ごとに入れ替わる。
この8人が遠く離れている場合はもちろん、近くや同じ場所にいてもそれぞれの物語を生きている。ページ数・文字数が必要なのはこのせいだ。物語が「長い」というよりも「多い」。著者は起きていることはすべて重要で、余さずに記そうと考えたらしい。そしてバラバラになりそうなこの8通りの物語を有機的に縒り合わせて、冒険と波乱に満ちた1つの物語にすることに成功している。
織り込まれている内容は、王位継承や貴族同士の確執、陰謀、忠誠と裏切り、家族愛等々。分量のこともそうだが、内容的にも本書は最初から大人向けに書かれた本だと思う。登場人物が多く、貴族間の婚姻などによる人間関係が複雑(これには、巻末の人物紹介が役立った)、そして部分的にではあるが性的な描写が直截でドギマギしてしまう。(娘が後ろから覗き込んできたときには、思わず本を閉じてしまった)
そして実は、この上下巻で物語は終わっていない。勃発した問題には決着が付いていないし、まだ語られていない物語が多く暗示されたままになっている。情報によると、本書が第1部として第4部まで出ているがまだ完結していないらしい。これはスゴイ物語に出会った。
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