蝦蟇倉市事件1

著 者:伊坂幸太郎、大山誠一郎、伯方雪日、福田栄一、道尾秀介
出版社:東京創元社
出版日:2010年1月29日 初版
評 価:☆☆☆(説明)

 1970年代生まれの作家陣による珠玉の競作アンソロジー第1弾。伊坂幸太郎、道尾秀介、大山誠一郎、伯方雪日、福田栄一の5人が筆を執っている。すでに第2弾 も出ていて、そちらは6人の作家さんが名を連ねる。合わせて11人の個性が楽しめる企画だ。
 企画と言えば、本書はただ5人の短編を1冊にしただけではない。「蝦蟇倉市」という架空の街で起きた事件という共通の設定で、それぞれが自由に描いた書き下ろし。ご丁寧に蝦蟇倉市の地図まであって、面白そうな企画なのだ。

 読んでいて「これは楽しんで書いてるな」という感じがした。例えば、他の作品の登場人物や事件がちょっとだけ顔を出す、といった伊坂作品の作品間リンクのような遊びがいい感じで含まれている。「楽しんでるな」という私の感じ方は外れではない証拠に、巻末の執筆者コメントには、「仲間に入れてもらうために急いで書きました」とか、「お祭りみたいだとわくわくした」という言葉が並んでいる。

 伊坂さん、道尾さんは単行本を読んだことがある、福田さんは「Re-Born はじまりの一歩」というアンソロジーで短編を読んだ、その他の方の作品は初めてだ。そのためだけではないと思うが、面白かったのはこの3人の作品。中では福田さんの「大黒天」が、短い物語なのによく練られた作品だった。
 率直に言って、犯罪の動機だとか方法だとかに不自然さは否めない。本格的なミステリファンには評価されないだろう。しかし、プロの作家さんの作品に対して失礼な言い草だけれど、これは「お祭り」だと思えばいいのかも。街のお祭りの出し物にちょっとアラが見えても、つべこべ言わずに楽しんだ方が良いように。

 道尾さんの作品「弓投げの崖をみてはいけない」は、叙述トリックたっぷりの「らしい作品(道尾作品はまだそんなに読んでないんですが)」だった。また、わざと謎が残してあって、執筆者コメントにそのヒントがある。ただ、初版には誤植があって、この謎が台無しになっている。これから読まれる方はご注意を。
出版社によるお詫びと訂正のページ http://www.tsogen.co.jp/np/isbn/9784488017354/

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