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著 者:古川日出男
出版社:集英社
出版日:2004年10月30日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 もう1年以上楽しく過ごさせていただいている本好きのためのSNS「本カフェ」で読書会が催され、その指定図書になっている本。著者の作品を読むのは本書が初めて。と言うか、お恥ずかしいことに名前にも心当たりがなく、もちろん日本SF大賞や三島由紀夫賞などを受賞されたことも知らなかった。

 短編が19編収録された短編集。ほとんどが10ページほどの短編だけれど、中には2ページしかない超々短編もある。そして全編がどこかおかしい、多くの作品はすごくおかしい。「面白い」という意味の「おかしい」ではなく、「何か間違ってる」という意味の「おかしい」だ。
 例えば、車のトランクに人が何人も入っていったり、叔母さんが猫を生んだり、猫が縮んでトンボのようになって飛んでったり。私は数編を読んだところで「想像力の翼」という言葉が頭に浮かんだ。「こうあるべきもの」という一切の制限を取り払い、想像力に任せて書き、それに任せて終わる。だから2ページで終わることもある。読書会では(眠っている間に見る)夢に例えた人がいたが、的確な例えだ。

 普通は、読者の反応とか、物語としての体裁とか、本を書く上で気にすることがあるだろう。「こうあるべきもの」とはそういったことを言っているのだが、本書にはそれが感じられない。「面白くしよう」とかさえも。だから「ヤマなしオチなし」も多い。
 何編かは捉えどころがなく、何編かは不気味、何編かはさわやか。そして「面白くしよう」という意図が感じられないのにも関わらず、何編かはすごく面白い。アルパカの生産・輸入を考えていた男の話「アルパカ計画」には笑えた。すごく上手い手だけれど、この手は1回しか使えないだろう。

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