村上春樹 ロングインタビュー/雑誌「考える人」

 新潮社発行の季刊誌「考える人」の2010年夏号(7月3日発売)に、村上春樹さんのインタビュー記事が載っています。今年5月に箱根の富士屋ホテルで3日間かけて行われたインタビュー、90ページ(写真ページを含む)に及ぶ、まさにロング・インタビューです。

 インタビューを引き受ける返事に「The author should be the last man to talk about his works.」とあったそうです。これは、ずっと以前に村上春樹さんが、米国の作家のレイモンド・カーヴァーさんを評して引いた言葉でもありますが、「著者は己れの著作に対して最も寡黙であるべきだ」という意味です。
 それにしては今回は自分の作品について多くを語ってくれました。皮肉で言っているのではありません。ありがとうと言いたい気持ちです。「1Q84」について、私が聞いてみたかったことも触れられていました。(ただしそれでは納得はできす、今度はこちらから言いたいことができてしまいましたが。)

 ところで、記事を読んでいてある時からとても気になることがありました。それは「このインタビュアーはどういう人なのか」ということです。時折投げかけられる春樹さんからの振りや問いかけに完璧に応える、「100%のインタビュアー」。もう一人の春樹さんがいるかのようでした。
 その人は本誌の2002年の創刊時から編集長を務める松家仁之さん。1982年に新潮社に入社し、数多くの書籍や雑誌の編集を手がけた名編集者だそうです。1984年か85年には、春樹さんが長期滞在するハワイに遊びに行ったと、巻末の「編集部の手帖」にありますから、付き合いも長いのでしょう。

 その松家さんはこの6月末で新潮社を退社されたそうです。つまり、これが新潮社での最後の仕事。当て推量で言えば、この記事は春樹さんが打てば響く信頼する編集者へ贈った「はなむけ」であり、松家さんが立つ鳥として本誌とその読者に贈った置き土産なんじゃないでしょうか。

 残念なことに、本誌は私が調べた限りではネット書店各社には新品の在庫がありません。私は出版社に注文して送ってもらったのですが、それも品切れのようです。ジュンク堂さんなど全国で80店あまりが「バックナンバー常備店」らしいですが、在庫があるのかは分かりません。ただ先日、近所の書店に置いてあるのを見かけました。1400円と安くはないですが、その他の記事も充実しているので、興味がある方は見かけたらすぐに買うことをおすすめします。

 ジュンク堂「編集者の棚」(松家仁之さんへのインタビュー記事)

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