著 者:森絵都
出版社:理論社
出版日:1998年11月 第4刷発行
評 価:☆☆☆(説明)
お世話になっている本好きのためのSNS「本カフェ」の読書会の9月の指定図書。SNSでは活発に意見交換、感想交換がされています。色々な感じ方捉え方があって、まさに十人十色です。
主人公は「ぼく」。大きな過ちを犯して死んだけれど、抽選に当たったラッキー・ソウル(魂)だ。何の抽選かというと、現世に戻って再挑戦ができるという抽選。それに成功すれば安らかな魂と同じように輪廻の輪に戻れるということらしい。
物語は「ぼく」が、自殺して死んだ中学三年生の真の身体に入り、真として家族や学校のクラスメイトとともに生活をする数か月を描く。「ぼく」に課せられた課題は「前世の記憶を取り戻し、犯した過ちの大きさを自覚すること」。見ず知らずの中学生として暮らすことで、そんなことができるのか?それは、真として家族や周囲の人との関係を築くことを通して分かってくる。
「ぼく」によって、一旦は自殺するほど絶望した中学生が、周囲との関係を回復していく物語。それをハートウォーミングに、時にコミカルに描く。人や出来事には色々な面があって、自分から見えているものがすべてじゃない、色々な色がある。上に「十人十色」と書いたがそれ以上にカラフルな「一人十色」だ。
とても良い物語で、「あなたはあなたのままでいいのよ」と言われたようで勇気付けられもした。ただ、私は本書にはのれなかった。「産経児童出版文化賞」を受賞していることもあってか、小中学校の図書館に置かれ、推薦図書になっている例もあるようだけれど、それにも賛同できない。
理由は、真が好きな後輩の女の子が援助交際、いや売春をしているのだけれど、その描き方を私は受け入れられないから。売春を「子どもに見せたくない」のではなくて、この描き方は「危険だ」と思う。
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