新世界 国々の興亡

著 者:船橋洋一
出版社:朝日新聞出版
出版日:2010年9月30日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 朝日新聞のオピニオン欄に本書と同名のシリーズ記事として、今年3月から6月まで掲載された11本のインタビュー記事を収めたもの。米国国家情報評議会顧問、米国の戦略シンクタンク所長、世界銀行総裁、紛争に立ち向かう国際NGOの理事長、北京大学国際関係学院院長..現在の世界政治・経済に大きな影響力を持つ人々が、世界の「3歩先」を語る。

 「3歩先」とは本書の帯にある言葉で、本文から推察すると大体20年後あたりを指しているらしい。ところが皮肉なことに本書は、著者が書いた前書きの「冷戦が終わった時、20年後、こんな「新世界」が生まれると、誰が予測しただろうか。」という一文で始まっている。20年前に現在を予測できなかったのに、今20年後を語ることにどんな意味があるのだろうか?
 でも私は、こんなことを書いて本書を揶揄して嗤おうとしているのではない。予言者でなければ、誰も未来を言い当てることはできない。著者もインタビューを受ける側も、そんなことは承知で20年後を語っているのだと思う。それは、20年後を仮定することで、それが「今すべきこと」を考える拠り所となるからだ。そう、大切なのは「今何をすべきか?」なのだ。

 それぞれの人が語った20年後は本書を読んでもらうとして、1点だけ多くの人が言及したことを紹介する。それは「中国がメインプレーヤーの一角になる」ということだ。現状の「平和的台頭」を守るのか、領土問題で垣間見られる強圧的な振る舞いに切り替わるのか、それは分からない。どちらにしても中国抜きでは、世界も日本も語れなくなる。
 著者が最後に提唱する「日本に必要な五つのパワー」は、正直に言ってどれも「何処かで聞いた」感がある、しかも実現が困難なものばかりだ。しかし、ここ10年以上も「日本@世界」というコラムを朝日新聞に書き続け、「世界の中の日本」という視点でモノを見てきた著者が、政治・経済のエキスパート11人のインタビューを終えて提唱したものだ。今一度じっくりと検討すべきだろう。大切なのは「今何をすべきか?」だ。

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2つのコメントが “新世界 国々の興亡”にありました

  1. 藤介

    最近、話題になっている
    「なぜ私は中国を捨てたのか」という書籍の著者で
    石平さんという方がいます。

    その方は中国はいずれ巨大な難民国家になると言っています。

    中国がどのようなメインプレイヤーになるかは分かりませんが、
    人としての良き付き合いができればと思います。

  2. YO-SHI

    藤介さん、コメントありがとうございます。

    その本面白そうですね。機会があれば読んでみたいと思います。

    私は学生時代に中国を2か月弱バックパックで旅行したことがあります。
    もう25年も前なのですが、その時も中国の人々や街にはエネルギーが
    たまっている感じでした。
    今は、国力が向上して自信も付いて、さらに力を蓄えていることでしょう。
    そのエネルギーが、良い方向へ発揮されることを願って止みません。
     

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