著 者:三崎亜記
出版社:集英社
出版日:2006年11月30日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
私がいつも拝見している読書ブログのいくつかで、しばらく前に紹介されていたのを覚えていて、今回手に取った。我ながらあきれたことに、紹介記事は読んだはずなのに、本書を前にして、著者のことも、どんな物語なのかも、どういう評価だったのかさえ覚えていなかった。それでも何か惹かれるものがあって読み始めた。
私には、すごく面白かった。「私には」とわざわざ付けたのは、これはダメな人には徹底的にダメだろう、と思ったからだ。その理由は、本書の独創性にある。ジャンル的にSF、恋愛小説、サスペンス、ミステリー、ヒューマンドラマ、本書はこれらの境界にあって、何か1つのものだと思うと非常に宙ぶらりんな感じなのだ。
また、「町が消滅する」という設定はともかく、「消滅耐性」「別体」「余滅」など、独創的な設定と造語が多い。それが、冒頭の「プロローグ、そしてエピローグ」という章に頻出するのだから「ついていけない」と思う人もいるはず。実際、私も面くらってしまった。
しかし、ここで挫けずに先へ進もう。章題で分かるように、これはエピローグでもある。すべてが終わった後にここに戻ってくる。その時にはちゃんと分かる、もっと感慨深いシーンとなっているはずだ。
物語の舞台は、日本によく似た別の場所。そこではおおよそ30年に1度、町が消滅する。正確には、その町の人間だけが忽然と消える。どうしてなのか、消えた人たちはどうなるのか、そういったことは分からない。その他大勢の人々は、消えた町のことは禁忌として扱い、自分とは関係ないと思うことで、この不気味な出来事と折り合いをつけている。
本書の主人公たちは、多くの人が関わりを避けようとする中、「町の消滅」に立ち向かう人たちだ。消滅を予知・対処する「管理局」の桂子、消滅の防止を研究する由佳、消滅した町を見下ろすペンションで働く茜。これ以外にも多くの人が、それぞれの立場で「次の町の消滅」に立ち向かって生きている。
とは言っても、本書は「町の消滅」の防止の実現を描いたサクセスストリーではない。消滅によって大切な人を失った、残された人々の「喪失」と「回復」を描く。人は大声で泣いて悲しむことを経て、「喪失」から立ち直るものだと思うが、実はここの人々は失った人を悲しむことを、ある理由から禁じられている。悲しむことさえ許されない、残された人々の悲しくも力強い物語。
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(たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)
これは好きな不条理SFかも。
でも椎名誠とは違う感じですね。
早速図書館で予約しました。←アフィリエイトに貢献出来なくてすみません。
失われた町 / 三崎亜記
うわ〜、またしても三崎ワールド。不思議な設定は読者の想像をはるかに超えている、と思う。でも、妙に現実的なところがあったりするからあなどれない。
===== amazonより
30年に一度起こる町の「消滅」。忽然と「失われる」住民たち。喪失を抱えて「日常」を生きる残…….
YO-SHIさん こんばんは。
三崎亜記さん、不思議設定ナンバー1だと思います。三崎ワールドに取り込まれると危険だと思いつつ、続けていろいろ読んでしまいました。
なんか不思議なんですよね。
YO-SHIさんが書かれている通り、ダメな人にはダメかもしれないですね。
廃墟建築士、ここまで話が深くないけどおすすめです♪
ポポロさん、コメントありがとうございます。
椎名誠さんの作品は読んだことないのですが、SFもあるんですね。
不条理SF、なんだか面白そうです。
—-
たかこさん、コメントありがとうございます。
そうそう、「私がいつも拝見している読書ブログ」のひとつは
たかこさんの「たかこの記憶領域」。この本の記事もありましたよね。
(失礼にも、内容は忘れてしまったわけですが(笑))
「廃墟建築士」も気になっています。まずは「となり町戦争」から
行こうかと思っています。
三崎亜記「失われた町」
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「となり町戦争」が名作だったので、もう少し三崎氏の本を読んでみようと思って、この作品。
現実の中にある見事に形作られたファンタジーに期待 …