王国の鍵5 記憶を盗む金曜日

書影

著 者:ガース・ニクス 訳:原田勝
出版社:主婦の友社
出版日:2011年1月31日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 月曜日から始まる「王国の鍵」シリーズ5冊目は金曜日。今回主人公アーサーが対決することになるレディ・フライデーは、世界の中心に位置するといわれている「ハウス」の中層の管財人。実は、彼女は前作「戦場の木曜日」のラストシーンに姿を現している。アーサーの友人で、意識も身体も支配されてしまう菌に侵されたリーフを診察する医師として。

 今回は、このリーフから物語が始まる。彼女が目覚めたのは、自分の部屋ではないことはもちろん、病院のベッドでさえなかった。数多くの人が眠っている大きな部屋。やがて、レディ・フライデーがその部屋に入ってきて、眠ったままの何百人もの人々が夢遊病者のように、その後を追う。前作のラストの暗示の通り、リーフはレディ・フライデーの手に落ちてしまったらしい。
 一方のアーサーは、前作で辛うじて敵の大軍を押し返して、つかの間の安寧の中にあった。はずだが、これもレディー・フライデーの謀略にかかって、目のとどくかぎりの雪野原に、ひとり放り出されてしまった。

 アーサーは、これまでに手に入れた鍵の力によってほぼ無敵の状態。しかし前作からは、これをあまり使いすぎると、地球には戻れなくなってしまう、という葛藤を抱える。さらに「1作で1人のボスキャラと戦って勝ち抜く」という単純な構図も、前作での第2の敵の出現によって転換した。
 本作では、この転換がもう一段発展して、さらなる敵の存在や、身内に抱える不安定さが示唆されるなど、様々な仕掛けが施される。しかも、その仕掛けはラスト2行でもう1つ追加される。これは、益々目が離せない。

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