Story Seller3(ストーリーセラー3)

書影

編  者:新潮社ストーリーセラー編集部
出版社:新潮社
出版日:2011年2月1日 発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 月刊文芸誌「小説新潮」2010年5月の別冊として発売された雑誌を文庫化したもの。この雑誌は人気作家さんたちが競演するアンソロジー。「3」というナンバーが付いている通り、「Story Seller」「Story Seller2」に続く、同様の企画の第3弾。これまで、毎年2月1日に発行されている。

 今回の執筆陣は、沢木耕太郎さん、近藤史恵さん、湊かなえさん、有川浩さん、米澤穂信さん、佐藤友哉さん、さだまさしさん、の7人。前回のメンバーから、伊坂幸太郎さん、本多孝好さんが抜け、湊かなえさん、さだまさしさんが加わった。

 湊かなえさんは、デビュー作「告白」が2009年の本屋大賞他を受賞して、一躍有名になった作家さんだけれど、私は「告白」だけでなく他の作品も読んでいない。「子どもがつらいめに遭う話」を読むと、私までつらくなってしまうので敬遠していたのだ。
 だから、ページをめくって、「湊かなえ」という大きな字が目に入った時には、思わす「参ったなぁ」と呟いていた。「避けてきたのに、読むことになってしまった」と思った。しかし、心配は杞憂に終わった。後半で明かされる、主人公が負った心の傷は深いものだった。でも、彼女の前向きな姿勢と、舞台となった南の島の空気とに助けられて、軽やかに物語を味わうことができた。

 さだまさしさんの作品も「読む」のは初めてだった。今から30年前の中高生の頃、好きだったので曲はたくさん聞いた。高校の修学旅行のバスの中で、ラジカセで「防人の詩」を大きな音でくり返しかけて、クラスメイトに迷惑をかけた。
 「読む」作品も良かった。丁寧に作られた「読ませる」作品になっていた。ただ、最近に起きた実際の事件をそのまま作品の中に取り込んでいて、その事件の被害者や関係者が「偶然目にする」可能性を考えると、あまりに生々しいのではないかと心配になった。

 有川浩さんは、「Story Seller」「Story Seller2」と、気持ちの晴れない作品が続いていたが、今回は違った。でも、読んでいて落ち着かないのは同じだった。もし、読んでいる最中に横から覗かれたら、私は焦りを気取られないように注意して、ゆっくりと本を閉じただろう。どうしてかは、読んでもらえば分かると思う。

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2つのコメントが “Story Seller3(ストーリーセラー3)”にありました

  1. 松田

    弁当箱訂正で読みましたね。(笑)わたしは「告白」は読みましたが、実際は子供がいじめにあうという話ではなく、なんだかもっと人間の深い心の部分の暗い澱のようなものが感じられる
    作品でした・・・・わたしも母親として気持ちはわかるけど、実際そこまでどうかなあ、というような読後感で。 さださんの作品は私も初めて「読み」ました。感想はYO-SHIさんに同感です。
    やはり米澤穂信がよかったでしょう??
    それと、シアター!、とシアター!2、両方読みました、早くも3が待ち遠しい。母、めっちゃかっこいいですよね~。

  2. YO-SHI

    松田さん、コメントありがとうございます。

    「弁当箱」発言では、恥ずかしい思いをしました。
    未だに、何でそう思ったのか分かりません。

    米澤穂信さんは良かったです。昭和初期っぽいやつですね。
    他にもあったら、私も読みたいです。

    「シアター!」母の出番は僅かでしたが、カッコ良かったです。
    有川さんは、カッコいい女性を描くのも上手いですね。
    母には、これからも登場して欲しいです。

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