著 者:米原万里
出版社:角川書店
出版日:2001年6月30日 初版発行 2002年9月5日 8版発行
評 価:☆☆☆(説明)
本好きのためのSNS「本カフェ」の読書会の10月の指定図書。
著者は、本業のロシア語の通訳の他、エッセイスト、テレビのコメンテーターなど、幅広く活躍されていた。2006年5月に亡くなられた。合掌。(もう5年も経つとは思えないのだけれど)
本書は、著者が9歳から14歳までの少女時代を過ごした、プラハのソビエト学校での思い出と、当時の友だち3人を31年ぶりにそれぞれ訪ねた顛末が綴られたもの。タイトルにある「アーニャ」はその中の1人。2002年度大宅壮一ノンフィクション賞受賞。
ソビエト学校とは、ソ連外務省が運営する学校で、50か国以上の子どもたちが通っていた。著者の父が日本共産党代表として、各国共産党の情報誌編集局のあるプラハへ赴任し、著者も一緒に渡欧したのだ。チェコ語ではなく、ロシア語で授業が行われた。つまり、著者のロシア語通訳としての原点はここにある。
ガラスの多面体のように、光の当て方を変えると違った見え方のする作品だった。時にユーモアを交えて描かれる、少女たちの学校生活の活き活きとした姿。少人数で自律を重視した、日本とは大きく違う学校運営も興味深い。音信不通の友だちとの再会は叶うのか?といったサスペンス調のドキドキ感。
そして、子どもたちにも影を落とす、共産主義を共有しながらも各国で微妙に異なる事情。再会が露わにした31年間のそれぞれの人生。子どもの微笑ましい暮らしから政治経済問題まで、様々な視点から見ることができ、どの視点からも著者の息づかいが伝わってくる。
私が特に思いを馳せたのは、著者を含めた4人の31年間の人生についてだった。それは本書には多くは書かれていない。しかし、31年後に会った40代半ばの女性になったそれぞれを見れば、その歩んできた道のりが慮られる。
その道のりは、著者の歩んできた道と、大きく隔たっていた場合もある。アーニャとの再会では、「31年ぶりに会った友だちに、そんなこと言わなくても」と思う場面もあるのだけれど、それは逆に著者がアーニャを、まだ「友だち」だと思っていることの証しなのかもしれない。
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『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』
米原万里 『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』(角川文庫)、読了。
これまで、米原万里という人の背景を、恥ずかしながら何も知りませんでした。
子供時代をプラハで過ごしたというのは何かで読んだ記憶が……
『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』 米原万里
「米原万里」のノンフィクション作品(エッセイ?)『嘘つきアーニャの真っ赤な真実』を読みました。
[嘘つきアーニャの真っ赤な真実]
2002年度第33回「大宅壮一」ノンフィクション賞受賞作品です。
—–story————-
ユーモラスに、真摯に綴られた、激動の東欧を生きた三人の女性の実話!
一九六○年、プラハ。
小学生の「マリ」はソビエト学校で個性的な友だちに囲まれていた。
男の見極め方を教えてくれる、ギリシア人の「リッツァ」。
嘘つきでもみなに愛されているルーマニア人の「…