著 者:橋下徹 堺屋太一
出版社:文藝春秋
出版日:2011年10月31日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)
私は、テレビなどで気になる主張をする人がいたら、批評をする前にその人の著書を読むようにしている。テレビや新聞などで伝えられるものは、その人の主張の断片しか伝えていないと思うからだ(特にテレビは全く信用していない。)そして本書は、明日19日に就任する橋下徹大阪市長の主張が記された本だ。
実は私は、先の大阪市長選の結果を大変不安な気持ちで受け止めた。以前から、橋下さんの主張は競争原理主義、新自由主義的で、特に教育行政への態度について不安を感じていたからだ。23万票弱、現職の市長の得票を4割超も上回っての圧勝。小泉構造改革路線の結果の荒廃を見て、競争だけを是とする路線に白紙委任する危険を学んだはずなのに..
それで本書を読んで、橋下さんの主張はどうだったのか?というと、「大阪都構想」は、大変念入りな実効性のあるものだということが分かった。東京都への対抗意識などではないし、ましてやテレビが演出する「ヤンチャ坊主の大言壮語(失礼!)」的なものなどでは全くない。
それにも関わらず、私の不安はさらに強いものになった。良い「政策」や「住民サービス」を担保するものは「競争」のみなのだ。例えば、住民と接する「区長」は現在は公務員だが、これを公選制にして身分保障がなくなれば、良い住民サービスを競争するだろう、と。詳しくは書かないが、それは、私が不安を感じる教育行政でも同じだった。
そもそも橋下さんは「政策」を自分の役割だとは思っていないらしい。自分の役割は、仕組み作りや戦略の実行であって、「政策」は専門家が練り上げればいい、どんな「住民サービス」を提供するかは住民が決めればいい、と言うのだ。
また、「選挙」を実績の審判だと捉えている。新しいことをやる前からごちゃごちゃ言わずに、やってみてダメなら選挙で辞めさせればいい、と。「選挙結果」は民意であり委任状なのだ。もちろん「選挙」は、市民が政治参加する限られた機会の1つだから、これを重視するのは道理ではある。でも私は不安を覚える。
それは、本書を読んでいて私が感じたことと関連する。この本は政治をテーマとして書かれた本としては、すごく分かりやすい、と感じた。その感じが、大阪市長選の報道で流れたある女性のインタビューと重なったのだ。
問:平松候補と橋下候補を比べてどうでした?
女:橋下さんの方が分かりやすかったかな。
問:「大阪都構想」って分かりました?
女:....ようわからんかった。
「ようわからん」でも、「分かりやすい」と感じて一票入れてしまう。橋下さんにはそんな「分かりやすさ」がある。その結果は民意となり委任状となる。そうした橋下さんの捉え方自体は、代議制民主主義そのもので、建前としては責められない。彼の登場で、有権者は新たな覚悟を求められることになったのだと思う。
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(たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)
この書評を読み、大阪問題の根が見えたような気がしました。
衆愚政治という概念が生きているのですね。
かといって・・・、やはりリーダーシップのあり方が問われるのでしょうか?
じゅんちゃんさん、コメントありがとうございます。
「今のままでいいのか?」
「かといって・・・」じゅんちゃんさんのこの言葉の・・・の部分を
私はこう想像しましたがどうでしょう?
橋下氏も本書の中で、今の大阪を「ボロボロのポンコツだけれど、
なんとか走りはする車」に例えてこう言ってます。
「新しい構想に批判ばかり噴出するけれど、今乗っている車は大丈夫なの?」
悩ましいですね。
体制維新―大阪都(著:橋下 徹・堺屋 太一)
大阪市長・橋下さんと、作家・堺屋太一さんの共著です。2012年1月現在、橋下市長のブレーンとなるべく、大阪都構想実現のための戦略組織の特別顧問として堺屋さんは活動しています。
それぞれの地域の実情にあった政策が行われるためにも、
都構想がいいと思います。今の国民は全てお任せ意識だから
不安になってしまうかもしれませんが、このまま行ったら
日本国全体が夕張になって行きます、その前にそれぞれが
自主自立する気概をもたないといけあせん。
現状のもっと酷い制度は問題視せず、変える内容のことの
批判ばかりするのは如何かと。。
あのさん、コメントありがとうございます。
都構想は、私もよく練られた良い構想だと思います。
そして、マスコミはそれをしっかり伝えていない。
ただ、橋下氏への批判は都構想への批判ではないのでは
ないでしょうか?
例えばいわゆる「君が代起立斉唱条例」は、都構想と何の
関係もないように私には思えます。