ヒア・カムズ・ザ・サン

著 者:有川浩
出版社:新潮社
出版日:2011年11月20日 発行 
評 価:☆☆☆(説明)

 たった7行のあらすじから生まれた3つの物語。著者の最新刊の本書は、まだ7行しかない「ヒア・カムズ・ザ・サン」という演劇のあらすじから、著者の有川浩さんと成井豊さんのお二人が、それぞれ別の物語を生み出す、というコラボレーション企画からうまれた作品。成井さんは、演劇集団キャラメルボックスの代表で構成・演出を手掛ける。

 今年5月に、キャラメルボックスの舞台公演があり、ほぼ同時に著者の作品が「小説新潮」に掲載され、2つの「ヒア・カムズ・ザ・サン」生まれた。その後著者は、舞台の設定と登場人物を生かして、もう一つの物語「ヒア・カムズ・ザ・サン Parallel」を書き下ろした。つまりたった7行のあらすじから、小説が2つ演劇が1つの3つの物語が生まれたのだ。本書には、著者の作品である2つの物語が収められている。

 その7行のあらすじは、著者のブログに掲載されているので、そちらを見ていただきたい。ここでは、その7行をさらにかいつまんで紹介する。「出版社で働く30歳の真也は、物や場所に残された人間の記憶が見える。ある日、会社の同僚のカオルの父がアメリカから20年ぶりに帰国した。彼はハリウッドで映画の仕事をしているという...」

 お見事でした。特に1作品目「ヒア・カムズ・ザ・サン」が良かった。最近の著者は「恋愛未満」のラブストーリーが上手い。そして「大人の恋愛」も。100ページ足らずの短い物語の中で、いくつもの恋愛の形を描き、若者の成長を描き、作家と編集者の関係を描き、出版業界への皮肉もチクリ。お題を基にした仕事であることも含めて、まさに「職人技」でした。

 2作品目の「ヒア・カムズ・ザ・サン Parallel」は、演劇の舞台から設定を持ってきているので、著者にしてみれば、より制限の厳しい試みだっただろう。ちょっと単調な感じを受けたが、「おっさん萌え」の著者は、おっさんの心根が分かるらしい。おっさんである私はちょっと嬉しかった。できれば演劇の方も観たいのだけれど、今のところDVDなどはないようだ。

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3つのコメントが “ヒア・カムズ・ザ・サン”にありました

  1. YO-SHI

    kenjiさん、コメントありがとうございます。

    いつも見ていただいて、ありがとうございます。
    kenjiさんのブログも拝見しました。

    私は神戸生まれで、大阪湾の端っこを見て育ちました。
    匂いは沖縄の海と似ているんですね。

  2. 粋な提案

    「ヒア・カムズ・ザ・サン」有川浩

    真也は30歳。出版社で編集の仕事をしている。彼は幼い頃から、品物や場所に残された、人間の記憶が見えた。強い記憶は鮮やかに。何年経っても、鮮やかに。ある日、真也は会社の同僚のカオルとともに成田空港……

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