さよならドビュッシー

著 者:中山七里
出版社:宝島社
出版日:2010年1月22日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 本好きのためのSNS「本カフェ」のメンバーさんが、2011年に読んだ本で1番に選んでいたので読んでみました。2009年「このミステリーがすごい!」大賞受賞作。

 主人公は香月遥、ピアニストを目指す少女。資産家の祖父を持ち、音楽科のある高校への進学が決まり、幸せな暮らしを送っていたが、火事に巻き込まれ全身に重い火傷を負う。一命を取り留めた主人公は、再びピアニストを目指して困難な道を歩む。その途上には、さらなる不幸と、資産家の財産を巡って黒い影が見え隠れする。

 本を読んでいると、文章から視覚や言語以外の感覚を、とてもリアルに呼び覚ます、「文章の力の可能性」を感じさせる作品にたまに出会う。三浦しをんさんの「風が強く吹いている」では走る息遣いを感じたし、森博嗣さんの「スカイ・クロラ」シリーズでは空を飛んでいる気がしたし、恩田陸さんの「チョコレートコスモス」では女優の演技が目の前に立ち現れた。

 本書もそんな作品の一つで、本書からは「音楽」が聞こえて来る。主人公や彼女を指導する先生、ライバルたちの演奏シーンは、リズミカルなピアノの音がしていた。私には音楽の才能も知識もないので、主人公が弾くドビュッシーの曲がどんな曲なのかも知らない。それでも、強弱を繰り返す音のうねりや、コロコロと転がるような音の連なりを感じた(ドビュッシーの曲がそういう曲なのかどうかはさておき)。

 本書はこのようにとても文章の力がある「音楽小説」であると同時にミステリー小説でもある。ミステリーとして、「犯人探し」に焦点を当ててしまうと、ちょっと不満が残るかもしれない。しかし、なかなか大掛かりな仕掛けで楽しませてくれた。(私は途中で仕掛けに気が付いてしまったのだけれど、それはそれでOK。充分に楽しめた。)

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2つのコメントが “さよならドビュッシー”にありました

  1. きよ

    (*^-^)こんにちは。私も読みましたが、高評価の人が
    多いですね。確かに音楽が流れるような物語だったかも。
    でも、それ以前に、コンクールで「アラベスク弾いて優勝」は、ありえないです・・・、私は、そこでしらけました。いくら感動させても、特別賞くらいかな

  2. YO-SHI

    きよさん、コメントありがとうございます。

    知らないで良かった、ってことがあるんですね。

    私は「アラベスク」と聞いても何も思い浮かばなかったんですが、
    先日ネットで探して聞いてみたら、以前にうちの娘がピアノの
    発表会で弾いた曲だと分かりました。

    娘の演奏はともかく、同じ曲でも技術・表現両面を磨いて磨いて
    到達するものはあるのでしょうが、「ありえない」とおっしゃる
    お気持ち、今はなんとなく分かります。

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