著 者:今井真理
出版社:こう書房
出版日:2012年7月10日 初版発行
評 価:☆☆☆(説明)
著者の今井真理さまから献本いただきました。感謝。
著者は、アートセラピー、美術教育の研究者。これまでは、芸術療法の専門書や美術教育の実践書を書かれていたが、本書はビジネス書として刊行されている。それには、アートに馴染みのない人にアートの持つ力や楽しさに触れてもらいたい、心が疲れてしまった方のために何かできることを..著者のそんな想いが込められている。
本書は「読む本」ではなく「描く(書く)本」。示されたテーマについて、言葉で表現したり絵を描いてみたり。雑誌や色紙などを切り取って貼る、というのもある。テーマは、「思い思いの線を引いてみましょう」「マス目に好きな色を塗りましょう」といった、取り付きやすいやすいものから始まって、比較的早くに「心の叫び」や「将来の私」といった少し考えなければいけないものも現れる。(次の画像は、私が描いた「ポジティブな私」のイメージ。分かるような分からないような...)
タイトルに「ストレス解消!」とあるが、そのことについて本書には2つの効用がある。1つ目は、色を塗ったり線を引いたりしていると、その作業に集中して他のこと(例えば今日あったイヤなこと)をしばし忘れること。一旦忘れて次に思い出した時には、違う見方ができるかもしれない。
2つ目は、テーマの多くは自分の内面に関するもので、それを客観的に見られること。絵で表現するという行為は、対象を外側から見ることになる。自分が書いた絵を見て、「こういうことなんだ」と改めて気づくこともある。悩みや迷いについて「答えは自分の中にある」と言われることがあるが、客観的に見ることでその答えに近づくことができる。
とは言え、正直に言って本書はなかなかの難物だ。絵を描くこと自体にストレスを感じたら、ストレス解消になりようがない。私の知り合いは「思い思いの線を引いてみましょう」で、「そういうのがヤなのよね」と言って、手を付けなかった。世の中には「絵を描くのが苦手」という人は多い。
しかし、タイトルの通りこれは「らくがき」なのだ。もっと気楽にいきたい。そこで提案がある。それは3つの「自由」。(1)評価からの自由:描いた絵の良し悪しを誰かに評価されない。できれば自分も評価しない。(2)時間からの自由:時間がかかるテーマもある。時間に余裕がなければ「続きはまたいつか」ぐらいでいいと思う。(3)テーマ選択の自由:やりたくないテーマはやらない。後日、やってもいいかな?と思ったらやってみる。
著者も「おわりに」や、私にくださったお手紙でおっしゃっているのだけれど、絵を描くことへの嫌悪感や苦手意識の原因の一端は、学校の美術教育にあるように思う。私は特に「優劣の評価がされること」が問題だと思う。その点で(1)の「評価からの自由」は重要なのだけれど、「うまく描かなければ」という自分自身の縛りもあって、これからの解放がなかなか難しい。
最後に。この本は随分前にいただいていたのだけれど、紹介するのが今日になってしまった。自分のためにこの本を活用してみようと思い、私自身が「3つの自由」を意識した結果、時間がかかってしまった。良い本に巡り合えたと思う。著者の今井さんに再度感謝。
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