アーヤと魔女

著 者:ダイアナ・ウィン・ジョーンズ 訳:田中薫子
出版社:徳間書店
出版日:2012年7月31日 初版発行
評 価:☆☆☆(説明)

 昨年3月26日に亡くなった著者の遺作となった作品。本書については、著者が亡くなった時の公式ファンサイトの告知で出版が予告されていた。そこに、A short novel for younger readers とあった通り、120ページほどの短い物語で、すべての見開きには挿絵(カラーの挿絵もたくさん)がある、比較的低年齢向けの作品。

 主人公のアーヤは、孤児院で暮らす少女。何でも自分の思うようにしてくれる、この孤児院が大好きだ。だから里親となる人たちが子どもたち見に来る日には、わざとかわいくなくして引き取られないようにしていた。ところがある日、変わった夫婦に引き取られることになる。

 変わった夫婦というのは、黒く長い影のような背の高い男(おまけに角があるように見える)と、両目の色が違う青い髪の女。男の名前はマンドレーク、女の名前はベラ・ヤーガ。なんとこの夫婦は、魔法使いと魔女で、アーヤを助手としてこき使うために、引き取ったのだった。

 著者の主人公たちは、こんなことで参ってしまうような子どもたちではない。アーヤもあの手この手と反撃を試みる。実は、アーヤにも隠された過去があって...という物語。

 佐竹美保さんの挿絵が美しくて、楽しい絵本のようだ。低年齢向けだからか、ストーリーは比較的単純。著者の多くの作品に見られる捻った展開や、辛口のユーモアはほとんどない。まぁだから、大人のDWJファンにはちょっと物足りないかもしれない。ただ、主人公アーヤの「かわいくない」ところや、困難に正面から立ち向かう性格は、著者の作品の主人公そのものだ。

 低年齢向けだとしても、ちょっとあっさりしているし、登場人物や設定が生きていないように思う。これは全くの想像だけれど、「遺作」ということなので、特別な経緯があるのかもしれない。例えば、これからもう少し肉付けされる予定だったとか、アーヤを主人公にしたシリーズの第1作だったとか。

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