七人の敵がいる

著 者:加納朋子
出版社:集英社
出版日:2010年6月30日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 本書は、今年の春にフジテレビ系列で「昼ドラ」として放映された同名のドラマの原作。新聞のテレビ欄で見かけた時に、石川達三さんの「七人の敵が居た」と勘違いして「ずい分と古いものを持ち出してきたなぁ」と思った記憶がある。それが、先日図書館でこの本を見つけて「あぁこれだったのか!」と借りてきて読んだ次第。

 主人公は山田陽子。出版社の編集者。モーレツに忙しい。愛息子の陽介が入学した小学校の、最初の保護者会が本書の冒頭。この陽子のPTAデビューは最悪だった。「PTA役員なんて、専業主婦の方じゃなければ無理じゃありませんか?」と言ってしまった。つまり、その場にいた多くの母親を敵に回したわけだ。

 「専業主婦でなければ無理」ということはない(実は、私もPTA役員の経験がある)。ただ、陽子にとってはそれは根拠のある主張で、それを非難する声には正論で返して黙らせてしまう。
 正論は正論として「そうは言っても..」「そこを何とか..」で回っているのが現実のPTA活動だ(と私は思う)。しかし陽子は、陽介に累が及ぶのを危惧しながらも、正論を止められない。学校で、学童保育で、自治会で、スポーツ少年団で....。その度に敵を作ってしまう。

 こう書くと、陽子がとんでもなく自己中心的な人間のようだけれど、読み進めるうちに、そうではないことが分かる(「その言い方は何とかした方がいいよ」とは、最後まで思ったけれど)。また、「陽子vs敵」の図式の繰り返しの中で、陽子にも敵にも「事情」を潜ませてあって、この辺りは著者の技ありだ。

 本来は「正論」は文字通り正しくて、それが通らない現実の方に問題がある。職場で「ブルトーザー」とあだ名を付けられた陽子は、その馬力で現実の問題を正そうと立ち向かう。そんな陽子を、助けたり協力したりしてくれる人も現れる。ブルトーザーは色んなものをなぎ倒してしまうけれど、その後には道ができて、人が歩けるようになる。

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七人の敵がいる”についてのコメント(1)

  1. 心に残る本

    「七人の敵がいる」加納朋子

    加納朋子「七人の敵がいる」を読みました。
    面白かったです!!
    主人公の山田陽子は、出版社で編集者として働きながら、子育て中。
    一人息子の陽介が小学校一年生になり、初めて出席した保護者会。そこで……

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