空色勾玉

書影

著 者:荻原規子
出版社:徳間書店
出版日:1996年7月31日 初版発行 
評 価:☆☆☆(説明)

 1か月ほど前の日経新聞別刷りの「NIKKEIプラス1」に載っていた、「何度も読み返したいファンタジー」というランキングの第9位が、本書から始まる「勾玉」シリーズ3部作。以前からこのシリーズをおススメしてくださる方もいたので、これをきっかけに読んでみた。ちなみに、このランキングの第1位は、上橋菜穂子さんの「守り人」シリーズ。

 舞台は、まだ「豊葦原の中つ国」と呼ばれていたころの日本。神々がこの国を治めていた太古の時代。天上にいる「高光輝(たかひかるかぐ)の大御神」と、黄泉の国にいる「闇御津波(くらみつは)の大御神」の2つの勢力、つまり光と闇が相争う状態にある。

 主人公は狭也(さや)という名の少女。もっと幼い頃に、鬼に村が襲われて両親を失い、身一つで逃げてきた。今もその頃の悪夢を見る。物語は、狭也が光と闇の2つの勢力の狭間で揺れ動きながら、自分の出自と為すべきことを見出す、成長の過程をダイナミックに描いている。

 「光と闇」と聞くと、「光=善vs闇=悪」という構図が思い浮かび、光の勢力による悪の討伐というストーリーが出来上がる。ところが(いや、もちろん?)、本書はそんな単純な構図の物語ではない。「光と闇」は表裏一体のもので、両者が相争うこと自体が悲劇を生んでいる。(神々の争いに巻き込まれる人間が哀れだ)

 狭也が、いわゆる宮中に采女として仕える日々は、新人が旧弊を破る「宮中モノ」風。その他にも冒険あり、変身あり、忠誠心あり、友情も愛情もある。著者自身が「自分が一番読みたい物語」を書いたというだけあって、重厚なテーマを扱いながらとても楽しめる作品になっている。

 上橋菜穂子さんの「月の森に、カミよ眠れ」や、たつみや章さんの「月神」シリーズと、テーマが通底する。海外作品にはない、国産ファンタジーならではの読み応えがある。

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2つのコメントが “空色勾玉”にありました

  1. freedom

    初めましてfreedomと申します。この度、「本読みな暮らし」様をリンクページにてご紹介させて頂きました。

    私は読書一覧ブログという読書内容紹介のホームページを運営しているのですが、もしよろしかったら相互リンクして頂けないでしょうか?

    サイト名:読書一覧ブログ
    http://shingoonline.blog.fc2.com/

    ご検討よろしくお願いいたします。

  2. YO-SHI

    freedomさん、コメントありがとうございます。

    相互リンクのお申し出、ありがとうございます。

    右サイドバーの「リンクリスト」に、「読書一覧ブログ」を
    追加しました。ご都合の良い時にご確認ください。

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