ナミヤ雑貨店の奇蹟

著 者:東野圭吾
出版社:角川書店
出版日:2012年3月30日 初版発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 数々の作品を世に送り出し続けている著者。本書はミステリーではなく、ハートウォーミングな作品。

 本書は複数の主人公からなる、いわばオムニバス形式の物語。盗みに入って逃走中の3人組。ミュージシャン志望の魚屋の息子。老いた父を心配する雑貨屋の息子。夜逃げの経験があるビートルズファン。...しかし、真の主人公は、人ではなく「ナミヤ雑貨店」という名の不思議な雑貨店だ。

 ナミヤ雑貨店は「どんな悩みも解決してくれる雑貨店」として、40年前に週刊誌に紹介された店。近所の子どもたちが「ナミヤ」を「ナヤミ」とわざと間違えたのがきっかけで、当時の店主の浪矢雄治が半ばヤケクソで始めた悩み相談が、評判になってしまったものだ。

 悩み相談の手紙を夜中に郵便口に入れておけば、翌朝には返事が返ってくる。雄治はどんな相談にも真剣に答えた。相談する方は手紙を出すときには半信半疑でも、返ってきた返事は真剣に受け取る。もちろん返事の通りにするとは限らないけれど、その後の人生には大きな影響を与える。

 さて、ここまで字数を使って書いてきたが、これでは本書の紹介にはなっていない。これはナミヤ雑貨店の悩み相談の「システムの紹介」に過ぎない。このシステム、つまり文通による悩み相談の両側、顔を合わせることの無い、相談する側と答える側(答える側にもドラマがある)の心の交流が物語を形づくっている。

 実は、これでも本書の紹介の半分ぐらいにしかならない。読み始めてすぐに気が付くが、著者の筆は、数十年の時空を軽々と飛び越えてしまう。いわゆるタイムスリップが起きて、一見すると派手な仕掛けに過ぎないように見えるかもしれな。しかし、時空を越えるからこそ描けた感動が本書にはある。

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3つのコメントが “ナミヤ雑貨店の奇蹟”にありました

  1. 心に残る本

    「ナミヤ雑貨店の奇蹟」東野 圭吾

    しばらくブログの更新ができずにいました。
    あるイベントの主催者のお手伝いとして、準備にいろいろ忙しかったもので・・・。
    そちらも無事終わりましたので、またブログのほうに復活しようと思います。
    と……

  2. 日々の書付

    「ナミヤ雑貨店の奇蹟」 東野 圭吾

    演劇集団キャラメルボックスが舞台化するというので、原作「ナミヤ雑貨店の奇蹟」を読んでみました。
    実は私、東野圭吾作品はちょっと苦手だったんです。東野作品ではときおり、人間の内面がひどく醜く描かれていて、そいつらにまったく共感できずに、物語にのめり込めないことがあったので。
    名作「容疑者Xの献身」ですら、物語は非常に面白かったものの、ヒロインの行動や心理に共感がもてませんでした。けれど、「ナミヤ雑貨店の奇蹟」は違いました。みんながみんな、心が優しい人達で、読み始めたら夢中になり、もう止まりませ…

  3. 読書と足跡

    ナミヤ雑貨店の奇蹟  著者 東野圭吾

    ナミヤ雑貨店の奇蹟 
    著者 東野圭吾
    東野作品史上、もっとも泣ける感動ミステリー、待望の文庫化!
    悩み相談、未来を知ってる私にお任せください。
    少年3人が忍び込んだ廃屋。
    そこは過去と未来が手紙でつながる不思議な雑貨店だった。
    悪事を働いた3人が逃げ込んだ古い家。そこはかつて悩み相談を請け負っていた雑貨店だった。廃業しているはずの店内に、突然シャ……

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