残り全部バケーション

書影

著 者:伊坂幸太郎
出版社:集英社
出版日:2012年12月10日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 「魅力的な登場人物」「巧みな伏線」「気の効いたセリフ」、伊坂作品の魅力が三拍子揃った作品。私は、伊坂さんのこういう本を読みたかった。「伊坂さん、ありがとう」と言いたい。

 表題作を含む5つの短編からなる、連作短編集。表題作「残り全部バケーション」は、「Re-born はじまりの一歩」というアンソロジーに収録されていて、以前に読んだことがある。「タキオン作戦」「検問」「小さな兵隊」は、別々の小説誌に掲載されたもの。最後の「飛べても8分」は書き下ろし。いわばバラバラに書いた5つの作品が、見事に響き合う1つの物語を奏でている。

 主人公は、溝口と岡田の二人組。当たり屋や脅しなどの細かい裏稼業の下請けをやっている。裏稼業の世界ということでは、「グラスホッパー」「マリアビートル」と同系列だけれど、本書の主人公たちは「殺し」はやらないので、だいぶ穏やかだ。

 溝口が岡田に裏稼業の手ほどきをした。この溝口が、何ともいい加減な男で、やることは行き当たりばったり、自分の身が危ないとなれば責任を他人に平気で押し付ける。でも、なぜか憎めない。岡田も溝口にひどい目に会わされるのだけれど、なぜか責める気にならない。「魅力的な登場人物」の筆頭はこの溝口。それに岡田をはじめ、その他にも粒ぞろいだ。

 「巧みな伏線」は、ここで明らかにするわけにはいかない。ただ、書き下ろしの「飛べても8分」が重要な物語だとだけ言っておく。「気の効いたセリフ」も、挙げればキリがないので言わない。
 また、セリフとは限らないけれど、伊坂さんの作品には、最初の一文に強い吸引力があることがある。例えば「モダンタイムス」の「実家に忘れてきました。何を?勇気を」とか。本書は「実はお父さん、浮気をしていました」の一文で始まる。(私は脱力してしまった。吸引力とはちがうかもしれない(笑))

 コンプリート継続中!(単行本として出版されたアンソロジー以外の作品)
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残り全部バケーション”についてのコメント(1)

  1. 粋な提案

    「残り全部バケーション」伊坂幸太郎

    人生、まだ、続いていくから。裏稼業コンビ「溝口」と「岡田」をめぐる全五章。
    人生のの物語
    夫の浮気が原因で離婚する夫婦と、その一人娘。ひょんなことから、「家族解散前の思い出」として〈岡田〉と名乗る男とドライブすることに──(第一章「残り全部バケーション」)他、五章構成の連作集。
    別々の話が読み進めていくと繋がっていく伊坂幸太郎さんお得意の連作短編形式です。
    特に今回は読みやすい感じ。……

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