著 者:リンダ・グラットン
出版社:プレジデント社
出版日:2012年8月5日 第1刷発行 10月7日 第7刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
著者は、ロンドン・ビジネススクールの教授。英タイムズ紙による2011年の「世界のトップビジネス思想家15人」のひとりに選ばれた。その著書はこれまで20ヶ国語以上に翻訳されてきたが、日本語の訳書の刊行は本書が初めて。これが10万部のベストセラーになっている。
本書はまず「2025年の働き方」を展望する。その時、私たちはどのような仕事観を持っているのか?どのような希望を抱いているのか?何に不安を感じているのか?そうしたことを「2025年のある1日」として、6つの物語に仕立てている。3つは悲観的なストーリー、3つはもう少し明るいストーリーだ。
この6つの物語は、著者ひとりの想像の産物ではなく、「働き方の未来コンソーシアム」という、世界中から多数の企業が参加した産学協同の研究プロジェクトの成果を基にしている。そこでは未来を形づくる5つの要因として「テクノロジー」「グローバル化」「人口構成・長寿化」「社会の変化」「エネルギー・環境問題」が挙げられ、それをさらに32の現象に細分化して検討するという緻密な作業が行われている。
ここまででも読み応えがあるのだけれど、本書のキモはこれからで、それは「悲観的なストーリー」と「もう少し明るいストーリー」が別れるのはいつで、それを決定するのは何か?に関する著者の考察だ。「いつか?」の答えは本書の1ページ目の第1行に簡潔に書いてある。「働き方の未来は今日始まる」。現在流行中の「今でしょ。」というわけだ。
「何か?」の答えは、「仕事」に関する考え方の転換(SHIFT)だ。本書のタイトルの「ワーク・シフト」はそれを指している。その「転換」は3つあって、簡潔にいうと「広く浅く」から「複数を深く」へ、「競争」から「協力」へ、「モノ」から「経験」へ。これを私たちが、主体的に選択した場合に「もう少し明るいストーリー」になる。この「主体的に選択する」ことが、本書の主張のキーポイントになっている。
さて、2025年と言えばあと12年、私は62歳になっている。考え方によっては、職業人生としてはゴールかゴール間近で、もう悩むこともないのかもしれない。しかし、12年と言えば長い。このまま漫然と、では済まないことは明らかだ。
また、2025年には社会の中心的役割を担う20~30代の人や、ちょっと荷が勝つかもしれないけれど、一番影響を受けそうな10代後半ぐらいの人も読んでおいて欲しい。
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