ガソリン生活

著 者:伊坂幸太郎
出版社:朝日新聞出版
出版日:2013年3月30日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 巻末の「初出」によると、本書は、2011年11月から2012年12月まで、朝日新聞に連載された新聞小説を、大幅に加筆修正したもの。

 主人公は緑色のデミオ。そう、あのマツダのデミオ。なんと車が主人公。彼らは、車体が見える範囲、排出ガスが届くような範囲であれば、お互いに話ができる。車輪が付いていればいいらしく、列車とも話ができる。ただし、自転車とは言語が違うらしく意思疎通ができない。人間とは(基本的に)話ができない。この車の会話が、本書の魅力の1つになっている。

 物語は、デミオの持ち主である、望月家が巻き込まれた騒動を描く。母の郁子、長男の良夫(20歳)、長女のまどか(17歳)、末っ子の次男の亨(10歳)。亨は小学生ながら、家族で一番大人びていて、良夫などよりよほどしっかりしている。言い換えれば「可愛げがない」。この「可愛げのなさっぷり」も、魅力の1つ。

 発端は、良夫が運転するデミオに、かつての人気女優、荒木翠が突然乗り込んできたことだ。「逃げているの。助けてくれないかな」と言いながら。スリリングな幕開けだ。しかも、その数時間後に荒木翠が事故で亡くなってしまう。

 この荒木翠の事故を軸に、まどかの彼氏が関わった悪党の悪事や、亨の同級生のいじめや、銀行ATMの強盗事件などのエピソードを絡める。さらに、それぞれのエピソードに関連があり、細かい伏線があり、なかなかに複雑な練り込まれた物語になっている。この「練り込み」も魅力。

 実は、私は新聞連載時にも読んでいるので、ストーリーは分かっていた。そのためか、一読した時には、そんなに面白いとは思わなかった。ただ、読み返したり伏線を追ったりしている内に、面白くなってきた。

 ※ブルーバードの伏線が一番よかった。作品間リンクあります。

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