アベノミクス大論争

編  者:文藝春秋
出版社:文藝春秋
出版日:2013年3月20日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 先日の参院選が自民党の圧勝という結果になって、安倍政権の経済政策である「アベノミクス」が国民の信認を得た形になった(公明党と合わせた与党の獲得議席は76で全体の62.8%。しかし得票率は48.8%と50%に足らず、これで「信認」と言えるのか?ということは、ここでは置いておく)。

 まぁそれで、もう少し「アベノミクス」について勉強しようと思い、本書を手に取った。先日読んだ「図解 90分でわかる!日本で一番やさしい「アベノミクス」超入門」は、著者が「アベノミクスは成功する」と考える人だった。だから否定的な意見も含めて、様々な意見を聞いてみようと思った。「大論争」というタイトルは、それにうってつけだった。

 内容は、アベノミクスについての論文や対論が10本余りと、TPPや憲法改正などの現政権が直面する課題についての対論が数本。雑誌や新聞などに掲載されたものを収録したらしい。短いものだったけれど、榊原英資さんと若田部昌澄さんの対論は読み応えがあった。その他には竹中平蔵さんや大前研一さん、藻谷浩介さんらテレビでおなじみの名前や、大学の先生らが登場する。

 本の感想としては、読んでよかったと思う。「様々な意見を聞いてみよう」という、私の目的には充分に応えてくれた。私と同じように「様々な意見を~」と思っている人にはいいだろう。ただし、本書としての主張というものはない。様々な媒体に載ったものを1つに集めた(だけの)ものなので、まとまりも無い。それでよければという条件付きで、おススメする。

 ここからは書評ではなく、この本を読んで思ったことを書いています。お付き合いいただける方はどうぞ

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 「アベノミクス」に肯定的な意見を持つ人と否定的な意見を持つ人を、それぞれ登場させて対論させても、反対意見を突き合わせるだけで、議論が深まらない、もしくはかみ合わないですね。ただ注意して見てみると、両者の間で一致している点があることがわかりました。

 それは、「アベノミクス」が功を奏して私たちがそれを実感できる(端的に言えば賃金が上がる)までに少なくとも数年はかかる、ということです。そして、その間この政策を続けられるかどうかが成否のカギで、続けられないリスク(可能性)はある、ということも一致しているようです。

 「続けられなくなったら失敗するじゃないか」と、リスクをストレートに表現するのが否定派で、「だからこそ何があっても、成功するまでこの政策を続けなければならない」と、意気込むのが肯定派です。私には、肯定派の意見は「気合で乗り切れ」的な、精神論にも聞こえます。

 ただ、精神論だからと言って、斬って捨てるわけにも行きません。否定派の予想が当たって幸せになる人はなく、肯定派の言うとおり「アベノミクス」には成功して欲しいと思うからです。これが悩みどころです。

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