著 者:小野不由美
出版社:講談社
出版日:1996年2月5日 第1刷発行 1999年10月8日 第11刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
「十二国記」シリーズの第5作。前作「風の万里 黎明の空」のレビュー記事で「陽子の物語で今後も押して欲しい」と書いたのだけれど、本書は別の人物を主人公に据えた、陽子が十二国にやってくる「月の影 影の海」の約90年前の物語だった。
主人公の名は珠晶。「恭」の国の裕福な商家の娘で12歳。物語の冒頭で彼女が登場した場所は、何と首都にある家から遠く遠く離れた辺境の地の宿屋。しかも、ほとんど身ひとつで連れもいない。およそ12歳の(しかも裕福な家の)少女に対して世間が抱くありようではなかった。
珠晶は「恭」の国王を選ぶ「昇山」に加わるためにここまで旅してきたのだ。「恭」の国は先王が崩御して27年。十二国の世界では、王がいないと国が乱れる。災厄が頻発し妖魔が人を襲うようになる。「27年も王が決まらないのは、自分がその王だからかもしれない。であればそれを確かめなくては。」というのが珠晶がここまで来た理由だ。
これを、子どもじみたよく言えば可愛らしい、悪く言えば愚かな考えだと思うのが「大人の考え」だろう。しかも「昇山」のためには、妖魔が跋扈する荒地を何十日も旅しなければいけない。こんなことを聞いたら優しく諭してやめさせるのが、まっとうな人間の行いだと、私も思う。。
こんな具合で物語は、珠晶が家を飛び出してから、辛苦を耐えて旅を続け、「昇山」に至るまでを描く。その途上で、大人を相手に「子どもじみた正論」を吐きまくり、そのたびに周囲の大人は苦笑いで応える。しかし、「正論」というのは正しいから「正論」という。珠晶が口にする「正論」のうちの幾つかには、ハッとするような真理が垣間見えるのだ。
元気な少女が活躍する物語は、ファンタジーの世界では定番と言える。そうであっても(そうだからかもしれないけれど)私は、本書はとても面白かった。大人がいなくては子どもは生きてゆけないのだけれど、大人は子どもから学ぶこともある。そう思った。
実は、珠晶は前作「風の万里 黎明の空」にも登場している。それに気が付くと、ある程度は結末が予想できてしまうのだけれど、それで興が削がれることはない。「あの珠晶はこういう子どもだったのか、なるほどね」と、分かった気になれる。
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陽子の物語も大好きなんですが、
シリーズの中で、図南の翼が一番好きです!!
何度読み返しても、珠晶の言葉に胸を打たれます。
口先だけじゃない、行動で示すっていうのがどれだけ大切かって、
今の時代にも言えますよね~!(>w< )
あ~!読み返したくなりました(^▽^笑)
あまねママさん、コメントありがとうございます。
お返事が遅くなりました。
この物語、とてもいいですね。私も好きになりました。
頭で考えたり、我慢したりしていても、問題は解決しない。
行動する必要がある、ということですね。