里山資本主義-日本経済は「安心の原理」で動く

著 者:藻谷浩介 NHK広島取材班
出版社:株式会社KADOKAWA
出版日:2013年7月10日 初版発行 12月20日 第7刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 共著者の藻谷浩介さんをテレビで拝見して、どんな考えをお持ちなのか気になっていたので、書店で平積みになっていた本書を手に取って見た。私は知らなかったのだけれど、中央公論新社の「新書大賞2014」の大賞を受賞したそうだ。

 タイトルの「里山資本主義」は、「かつて人間が手を入れてきた休眠資産を再利用することで、原価0円からの経済再生、コミュニティ復活を果たす現象」と定義されている。ただ、これではよく分からないと思うので、私なりの捉え方を説明する。

 「里山」というのは人が住んでいる場所に隣接した山林のこと。かつては人の手が入り、建築資材としての木材や燃料としての薪、木の実や果実といった食料などの資源を得ていた。資源の購入費用としてのコストはほぼゼロ円で、適切に管理すれば持続的・永続的に資源を得ることができた。

 「里山資本主義」は、こうした里山の利用のように、「地域内で」燃料や食料を調達し資金が循環する経済モデルのこと。本書では「マネー資本主義」や「グローバル経済」に対置、あるいはこれを補完するものとして語られている。

 著者は問いかける。「われわれが生きていくのに必要なのは、お金だろうか。それとも水と食料と燃料だろうか」と。「お金があっても食料や燃料が手に入らない」という経験を、私たちは東日本大震災の時にしている。長野県に住む私は、つい2週間前の大雪の時にもそうした事態に直面した。これは、暮らしの危機管理の問題でもあるのだ。

 必要なのは「お金」ではない。それは自明だ。それなのに、私たちの社会は「お金」を中心に回っている。それは「水も食料も燃料も、お金がないと手に入れられない」という前提だからなのだけれど、実はそうでない暮らしもある。

 本書にはその実例が豊富に紹介されている。岡山県真庭市では、製材で出る木くずを使った発電と、ペレットボイラーの利用で市全体で消費するエネルギーの11%を木のエネルギーでまかなっている。オーストリアのギュッシングという町は、なんとエネルギーの72%を自給している。

 とにかくお金をドンドンつぎ込んでグルグル回して...という「アベノミクス」や、「原発はベースロード電源」というエネルギー基本計画に、違和感や不安を感じる方に一読していただきたい。本書が「じゃぁどうしたら?」の答えになるかもしれない。

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