著 者:伊坂幸太郎
出版社:新潮社
出版日:2014年1月30日 発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
著者の最新作。それぞれ別のところで発表された短編を7編収録した短編集。タイトルの基になっている冒頭の「首折り男の周辺」と、最後の「合コンの話」はそれぞれ「Story Seller」と「Story Seller2」に収録されていて既読だった。
「首折り男の周辺」は、首を折られて人が殺される事件が連続して起きる中で、隣人がその犯人ではないかと疑う夫婦と、犯人にそっくりの体型・風貌で間違われる男と、いじめられている中学生が、それぞれ主人公の物語が交互に語られる。
2つ目は、事故で子どもを亡くした父親の復讐を扱った「濡れ衣の話」。「首折り男~」とゆるくつながっている。「首折り男~」も含めて「殺人」「いじめ」「復讐」という重々しい話を語りながら、湿っぽくならない。著者らしい作品。
その後の3作品は、伊坂作品ではお馴染みの「探偵&泥棒」の黒澤の物語。夫を介護中の女性が50年前の逢瀬について黒澤に調査を依頼した「僕の舟」。黒澤が訪ねたクワガタを飼育する小説家の物語と塾で暴力を受ける中学生の物語がシンクロする「人間らしく」。テレビの制作プロダクションの男からの奇妙な依頼を描く「月曜日から逃げろ」。
6つ目の「相談役の話」は、再びクワガタ飼育の小説家の話。ちょっと怖い怪談話。最後の「合コンの話」は、参加した男女3人ずつがそれぞれワケありで、会話の表面の和やかさと、裏に隠された緊張感を描いた作品。ここで再び「首折り男」が登場する。
最初に書いたように、それぞれが別のところで発表された作品で、「恋愛ものを」とか「怪談話を」と別々の依頼を受けたもののためか、統一感に欠ける。著者としても、色々なパターンの創作を試している風で、中には「実験的」な作品もある。「短編がたまったので1冊にしました」感がぬぐえない。
...というのが一読後の感想だった。ところが...
短編間のゆるいつながりが気になって、それを確かめるために読み返すうちに、「ゆるいつながり」ではなく、縦横にガッチリと連結していることに気が付いた。さらに、手元にある既読の2作品を読んで改変部分を確認すると、その意図がはっきり分かる。著者が、もともとバラバラだった作品の集まりを「連作集」に生まれ変わらせたのだ。伊坂さん、グッジョブ。
コンプリート継続中!(単行本として出版されたアンソロジー以外の作品)
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「首折り男のための協奏曲」伊坂幸太郎
首折り男は首を折り、黒澤は物を盗み、小説家は物語を紡ぎ、あなたはこの本を貪り読む。胸元えぐる豪速球から消える魔球まで、出し惜しみなく投じられた「ネタ」の数々! 「首折り男」に驚嘆し、「恋」に惑って「怪談」に震え「合コン」では泣き笑い。黒澤を「悪意」が襲い、「クワガタ」は覗き見され、父は子のため「復讐者」になる。技巧と趣向が奇跡的に融合した七つの物語を収める、贅沢すぎる連作集。
「首折り男の……