著 者:三上 洸
出版社:光文社
出版日:2003年3月25日 初版1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)
2003年の第6回日本ミステリー文学大賞新人賞受賞作品。
主人公は水原真彦。34歳。会社を辞めて始めたジャズバーの経営に行き詰り、資金繰りのために街金に手を出した。その後に転落を繰り返し、危ないヤツらに取り込まれ、今は店をシャブの取引所として提供している。
しかし転落はここで止まらず、さらに何度か転がり落ちて、ようやく止まったかに見えた仕事が、怪しい芸能プロダクションの運転手。その裏の仕事(表の仕事なんてほとんどないんだけれど)で、真彦は9歳の美少女のアリスに出会う。本書の後半は真彦とアリスの逃避行を描く。
本書は、ミステリーとは言っても「謎」はほとんどない。真彦を中心とした騒動が目まぐるしく展開していく。危機が次々と真彦を襲いそれをなんとか切り抜ける、を繰り返すジェットコースター・サスペンスだ。
この手の物語にありがちな「都合のいい展開」はもちろんあるけれど、リアリティを求めても仕方ない。話の運びのテンポがいいので、退屈することなくドンドンと読み進めることができた。
最後に。冒頭のシーンに結構なインパクトがある。もっと正直に言ってしまえば嫌悪感を感じる。設定がある種の禁忌に触れていて、私としてはもう少しおだやかな設定でお願いしたいと思った。ただ、それでも新人賞が取れたのかどうかは分からないけれど。
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