だから日本はズレている

著 者:古市憲寿
出版社:新潮社
出版日:2014年4月20日 発行 5月30日 6刷
評 価:☆☆☆(説明)

 著者の名前を世間に知らしめたのは、著作「絶望の国の幸福な若者たち」。不安定な労働環境、破綻寸前の年金制度などで、日本の将来は不透明、今の若者は不遇だと言われる中で、当の「若者」である20代の70.5%が、現在の生活に「満足」していると調査に答えている(*)、というところから書き起こしたものだった。

 当時著者が26歳という若さであったことと、既存の価値観や共通認識を覆す視点と、ユーモアと皮肉の効いた語り口で、大きな評判を呼んだ。私も読んだのだけれど、なかなか的を射た意見だった。本書は、その流れで書かれたいくつかの評論をまとめたものだ。

 「リーダー」なんていらない、憲法で国の姿は変わらない、やっぱり「学歴」は大切だ、「若者」に社会は変えられない..。リーダーシップ論が華やかで、憲法論議では「この国の形」を考えると言われ、「実力主義」が喧伝され、「若者よ、今こそ怒れ」なんて言われる現代の「逆張り」をする。

 面白く読んだ。多くの人が読むといいと思う。行き過ぎて思い込んでいたことを、クールダウンしてくれるだろう。でも気になったこともある。「逆張り」に囚われてしまっている気がする。頭のいい著者のことだから、それを承知で「望まれる役割」として敢えてそれを演じているのだろう。
 しかし、中には空疎な言いがかりめいたものや、「それを言っちゃダメなんだよ」ということもあって、「難癖キャラ」に成り下がってしまう危険も感じた。そうなってはもったいない。

 最後に。これも著者は承知のようだけれど、29歳で「若者」の代表のように語るのはつらいだろう。でも、もう10年ぐらいは、偉いおじさんたちが著者に「若者の意見」を求めるんだろうなと想像する。

(*)2010年の内閣府の調査。本書によると、2013年の調査ではこの数字は78.4%に上昇している。

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