いつまでもショパン

著 者:中山七里
出版社:宝島社
出版日:2013年1月24日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 「さよならドビュッシー」「おやすみラフマニノフ」に続く、岬洋介シリーズの第3作(スピンオフの「さよならドビュッシー前奏曲」を入れれば第4作)

 名古屋を舞台とした前2作と打って変わって、今回はポーランドの首都ワルシャワでの物語。5年に1度開催される国際ピアノコンクールの「ショパン・コンクール」。その一次予選のさ中に殺人事件が起きた。それも手の指10本全部を切り取られるという猟奇的な犯行だった。

 主人公は、ヤン・ステファンス。18歳。このコンクールの優勝候補。ポーランドで4代続いて音楽家を輩出する名家のホープ。それだけでなくポーランドの人々にとってショパンは特別な存在で、ヤンはポーランドの期待の星で、彼の優勝は人々の希望でもあった。

 このコンクールに、日本人が2人出場している。1人は榊場隆平。18歳。生まれながらの盲目ながら、耳から聞いた音楽を完璧に再現する天賦の才の持ち主。もう1人は岬洋介。27歳。そう、このシリーズの主役。類まれなピアノの表現力と共に、鋭い洞察力を持ち、これまでにも様々な事件を解決に導いた。

 これまでのシリーズの中で最高の作品だと思う。周辺の大国に蹂躙されたポーランドが置かれた歴史的な意味づけ、現代社会が抱えるテロとの戦い、といった大きな物語を取り込んだ骨太なストーリー。期待を背負った若者の屈託や親子の気持ちのすれ違い、そして飛躍。読み応え十分だ。

 それから、忘れてはならないのが、音楽小説としての魅力。音楽の才能も知識もない私にも、文章から音楽が聞こえてくる。前2作もそうなのだけれど、これは本当に不思議だ。

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