僕僕先生

著 者:仁木英之
出版社:新潮社
出版日:2006年11月20日 発行
評 価:☆☆☆(説明)

 著者の作品は以前から気になっていたし、先日読んだ「Fantasy Seller(ファンタジーセラー)」に収録されていた作品もけっこう私の好みに合っていたので読んでみた。著者のデビュー作にして、2006年の日本ファンタジーノベル大賞受賞作。

 舞台は中国。時代は玄宗皇帝の治世の前半、つまり唐の絶頂期。県令という地方の行政長官の家に生まれた、王弁という22歳の若者が主人公。彼は、父が貯め込んだ財産で自分が無為に生きてもおつりがくることに気が付いて、仕事もしない勉学にも励まない、ダラダラとした暮らしをしていた。

 そんな彼が、父の使いで山の庵に住むという仙人を訪ねる。その彼を迎えたのが、姓は僕で名も僕という仙人。つまり僕僕先生。年齢は数千歳だか数万歳だか定かではない。それなのにこの先生、何と美少女の姿をしている。

 この出会いの後まもなく、王弁は僕僕先生の旅に同道することになる。その道中で、他の神仙の者たちや玄宗皇帝その人にも出会い、王弁自身も幾ばくかの才能を開眼させる。

 何とも楽しげな物語だった。僕僕先生は神仙の中でも一目置かれるような強力な仙人、王弁は今でいうニート青年。一見してアンバランスながら、王弁の中に何かを見た僕僕先生が導く、王弁の成長物語である。ただ、二十歳過ぎの青年と美少女という組み合わせが話を面白くする。いや、ややこしくする。

 普段は飄々とした僕僕先生が、真剣な表情を見せたり、かと思うと王弁に甘えたり。時々見せるいつもと違う側面に、物語の奥行を感じさせる。シリーズが現在7冊あるらしい。しばらくは楽しめそうだ。

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僕僕先生”についてのコメント(1)

  1. 日々の書付

    「僕僕先生」 仁木 英之

    日本ファンタジーノベル大賞、大賞受賞作。
    …と、いうことはつゆ知らず、可愛い表紙絵に魅かれて
    読んでみたら大当たり
    挿絵は畠中恵さんの「つくもがみ貸します」も担当された三木健次さん。
    貧相な馬を引く青年と、かわいらしい少女が綺麗な色の雲に乗っている絵が描かれています。
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    物語は唐の時代。都から遠く離れた光州に、王弁という…

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