地方消滅 東京一極集中が招く人口急減

編著者:増田寛也
出版社:中央公論新社
出版日:2014年8月25日 初版 9月25日 5版
評 価:☆☆☆☆(説明)

 衝撃的なタイトルが、内容に合っていない本はたくさんある。本書の「地方消滅」というタイトルも衝撃的だ。実は、私は地方都市に住んで、地域振興に関わりのある仕事をしている。つまり「消滅」させられる立場なので、幾分かの「憤り」を持って本書を手に取った。ところが、本書の場合は内容の方がさらに衝撃的かつ深刻なものだった。

 本書は、著者らが平成25年から26年にかけて「中央公論」に発表した論文を再構成・加筆したもの。その論文は、国立社会保障・人口問題研究所(社人研)の「日本の将来推計人口(平成24年1月)」を基にしている。この推計によると、2010年に1億2806万人あった日本の人口は、2040年には1億728万人に、2060年には8674万人になる、というのだ。

 しかし、都議会のヤジ問題でハッキリしたように「少子化対策」への取り組みには切迫感が全くない。何十年先の人口がどうなっていようとあまり関心ない、という人もいるだろう。みんな仕事がなくって困ってるんだし少し減った方がいいんじゃない?、という人もいるだろう。この問題の深刻さを認識している人が少ないのだろう(私もこれまでが認識していなかった)。

 著者らは本書の冒頭で、この推計をベースにして、次の世代の人口に大きく影響する20歳~39歳の女性(若年女性)に注目した、市町村別のシミュレーションを行っている。その結果、2010年から2040年にかけての30年間で、若年女性が5割以上減少する市町村の数が896、全体の49.8%にも上った。

 たった30年で半数の市町村で、若い女性が(男性もなのだけれど)半分以下になる。本書の入り口に過ぎないのだけれど、このシミュレーションだけでも十分に深刻だ。「少し減った方が」どころではないのだ。また「少し減った方が」と考える人は、人口が減れば市場も縮小して仕事も減る、ということを失念している。私たちの社会は急激な市場縮小(例えば30年で半分というな)に耐えられるようには制度設計されていない。

 本書では、この問題に題する対策も記されている。地に足の着いた対策だと思う。それは「子育ての環境を改善する」という一言に尽きる。幸いなことは、子育ての環境の問題点はずいぶん前から認識されていることだ。残念なことは、それにも関わらず一向に改善されないことと、今のままでは今後も改善の見込みがないことだ。暗澹。

 ※巻末に市町村別の「将来推計人口」が掲載されている。ご自分の市町村の推計を確認してみてはいかがだろう?

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