時をかける少女

著 者:筒井康隆
出版社:KADOKAWA
出版日:1976年2月28日 初版発行 2006年5月25日 改版初版発行 2014年5月10日 改版34版発行
評 価:☆☆☆(説明)

 1年ほど前に細田守監督のアニメ映画「時をかける少女
」を観た。映画はこの原作とは別の物語なのだけれど、主人公の少女の叔母の部屋に、原作と繋がる写真があるのを発見してニヤリとした。そして先日、書店で本書を見つけた。新装版の本書の表紙には、叔母さんの部屋にあった写真と同じ絵が使われている。そこで再びニヤリ。

 本書は、表題作「時をかける少女」と「悪夢の真相」「果てしなき多元宇宙」という3編の中編が収録されている。分量的にも表題作が一番大きいのだけれど、それでも100ページあまり。何度も繰り返し映像化されたことを思えば意外なほどコンパクトサイズだ。(巻末に映像化作品が紹介されている)

 あまりに有名な物語なので、その必要はないかもしれないけれど作品紹介を。主人公は高校3年生の芳山和子。放課後の理科実験室で謎の人物と遭遇するが、ついたての向こうに逃げたその人物がその場から消えてしまう。その時にラベンダーの香りをかいだ和子は、時間を遡る能力を身につけたらしい..。

 あらすじを追うだけならば簡単に終わってしまう。しかし、他人とは違う能力を得てしまった和子の煩悶(このあたりはアニメ映画の主人公とはだいぶ違う)とか、同級生への恋心や思いやりとか、短い中に普遍的なテーマが収まっている。映像化が繰り返されるのはこのためだろう。

 表題作だけを紹介したけれど、他の2編もけっこう面白かった。「悪夢の真相」は、中学生の主人公とその弟の「恐いもの」の深層(真相)を描く。ちょっとサスペンス調の物語。「果てしなき多元宇宙」の方は、タイトルどおりパラレルワールドを描いたもので、SFとしてはお馴染の展開。これは短い映像作品になりそう。

 最後に。和子が「まぁ!どうしたのかしら?」「甘いにおいですわ」とか、芝居のセリフっぽい話し方をするので、苦笑してしまう。50年近く前の作品だから、そのころの女子学生はこんなしゃべり方をしていたのかもしれない。もちろん、そうでないかもしれない。

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