著 者:高田郁
出版社:角川春樹事務所
出版日:2012年3月18日 第1刷発行 2014年5月18日 第12刷発行
評 価:☆☆☆(説明)
「みをつくし料理帖」シリーズの第7作。「滋味重湯」「牡蠣の宝船」「鯛の福探し」「哀し柚べし」の4編を収録した連作短編。
主人公の澪は、江戸の元飯田町にある「つる家」という料理屋の板前。彼女には、かつて修業した「天満一兆庵」の再興と、今は吉原にいる幼馴染の野江と昔のように共に暮らす、といった2つの望みがある。
しかし今回は、この2つの望みにはあまり触れられないままに物語が進む。前作「心星ひとつ」で叶いかけた、娘らしい「もうひとつの望み」が破れ(正確には澪が「違う道を選んだ」のだけれど)、その痛手からの立ち直りに時間を要した、というところか。
この物語には、悪人があまり登場しない。あくどい店や心無い人々はいるけれど、「つる家」の主人や奉公人、澪が住む長屋の住人、世話になっている医師、口うるさい店のお客まで含めて、いい人だ。彼らに助けられて澪の今がある。
ところが本書で、澪は大事な人を失ってしまう。この後どうなるのか。高名な易者の占いによると、澪の運命は「雲外蒼天(うんがいそうてん)」苦労の多い人生だが、その苦労に耐えて精進すれば、必ず青空が拝める、という。澪の行く末にまた暗雲が立ち込める。その先に青空はあるのだろうか。
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