著 者:養老孟司、宮崎駿
出版社:新潮社
出版日:2008年2月1日 発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
解剖学者の養老孟司さんと、スタジオジブリの宮崎駿さんの対談集。対談の時期は1997年、1998年、2001年の3回。ざっと15年ぐらい前になる。「もののけ姫」が1997年、「千と千尋の神隠し」が2001年の公開。養老さんの「バカの壁」は2003年、この対談はそれよりも前だ。
タイトルの「虫眼とアニ眼」について。「虫眼」は「小さな虫の動きも逃さず捉えて感動できる」眼のこと。少年のころはみんなが持っていたのに、いつか無くしてしまう。その点、養老さんは昆虫採集が趣味で、今でも「虫眼」を持っているらしい。「アニ眼」は、もちろんアニメとの語呂合わせだ。
この2人が雑誌のインタビュアー(3つの対談はそれぞれ別の雑誌の記事になったもの)を交えて、日本の自然のこと、社会のこと、教育のこと、お互いのことを語り合っている。最初の対談で相通じるものを感じたらしく、とても自然体でおおらかに会話が進む。年代が近いことも作用しているのだろう。
感じたことを2つ。1つめ。宮崎駿さんは、私とは年代も違うし立場も違うし..というより共通点を見つける方が難しいのだけれど、共感できることがいくつもあった。例えば「子育て」について。「極端なのは放っておいても育つわけだけど、それでも毎日毎日なにかしら手入れして育てる。でも、結局は子どもがどうなるかなんてわかるわけないんです」。これは、私もそう感じていた。
2つめ。冒頭にも書いたように、対談は15年も前に行われたもの。それなのに「古さ」をあまり感じない。当時人気のあった政治家の話題などは、さすがに月日を感じるが、日本の自然や「原風景」の喪失や、人の考え方の変化を嘆く様子は、今、この二人が対談しても同じことを話されるのではないかと思う。私たちの社会は、良くもならない代わりにひどく悪くもなっていないのかも、と思った。15年は長いようで短い。
ちょっと面白かったエピソード。「親から「うちの子どもはトトロが大好きで、もう100回ぐらい見てます」なんて手紙が来ると、そのたびにこれはヤバイなあと、心底思うんですね。(中略)いっそビデオの箱に書きたいですね、「見るのは年に一回にしてください」って(笑)。」
最後に。冒頭に宮崎駿さんのカラーイラストが多数収録されている。それは、宮崎さんの理想の保育園や住宅や広場とそれがある町を描いたもの。理想を「絵」で表現できるって素晴らしい。
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『虫眼とアニ眼』
養老孟司、宮崎駿 『虫眼とアニ眼』(新潮文庫)、読了。
少し前、宮崎駿監督が引退を表明されましたね。
私は別に宮崎アニメのファンと言うほどではないのですが、
それでもやっぱりヒット作は一通り観ています。
『風立ちぬ』は、まだですけど・・・。
なんとなく人当たりは柔らかいけど中身は頑固な職人という人物像を描いていたのですが、
こんなに喋る人だとは思いませんでした。
自説は……