知の英断

書影

著 者:吉成真由美
出版社:NHK出版
出版日:2014年4月10日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 20万部超(2014年3月時点)のベストセラーとなった「知の逆転」に次ぐ、世界の叡智と呼ばれる人々へのインタビュー集の第2弾。

 前著が「現代最高の知性」と言われる「研究者」へのインタビューであったのに対して、今回は国際政治の現場で実績を積む「知の実践者」へのもの。前著よりも議論が具体的で、本書の方がずっといい。おススメ。

 サイエンスライターの著者が、世界の「長老」に現代が抱える「困難」にどう立ち向かうのか?を聴く。「長老」は6人。ジミー・カーター、フェルナンド・カルドーゾ、グロ・ハーレム・ブルントラント、メアリー・ロビンソン、マルッティ・アハティサーリ、リチャード・ブランソン。

 国際政治に造詣が深い人でなければ、全員を知っている人はいないかもしれない。でも、各インタビューの扉のページに、コンパクトな紹介があって理解を助けてくれる。例えばジミー・カーター氏は「戦争をしなかった唯一のアメリカ大統領」、フェルナンド・カルドーゾ氏は「五〇年続いたハイパーインフレを、数か月で解消した大統領」という具合に。

 感銘を受けた言葉がたくさんあった。その一つを紹介する。ジミー・カーター氏の「北朝鮮と日本との関係を緩和するためには?」という質問への答え。主旨としては「お互いに尊敬の念を持って話し合うことだ」ということ。

 これは、他の紛争にも言えることで「相手は敵で悪い奴だ」と思っているうちは、「勝ち負け」でしか決着しない。そして「負けた」方は憎悪を募らせて、次の紛争の種となる。その悪循環。さて我々に紛争の相手に「尊敬の念を持つ」度量はあるだろうか?

 最後に、あまりに的確で脱力さえしてしまった言葉。アイルランド初の女性大統領で、現在はアフリカ大湖地域の紛争解決を担う国連特使のメアリー・ロビンソン氏の、現在の様々な「和平会議」を表したもの。「悪い男たちが悪い男たちと話をしては、お互いに許しあったりしている」。まったくその通り。

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