著 者:東田直樹
出版社:エスコアール
出版日:2007年2月28日 初版第1刷 2014年10月10日 第15刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
新聞の記事で本書の事を知って、とても興味を持ったので読んでみた。その記事には本書が28か国で出版され、英国アマゾンでは発売1週間でベストセラー、米国ではニューヨーク・タイムズが書評で紹介して発売1カ月で10万部、ということが書かれていた。
著者は、2007年の本書の出版時には14歳の中学生。重度の自閉症で人と会話をすることができない。そんな彼が、周囲のサポートと本人の努力によって、「筆談」というコミュニケーション方法を得た。これによって彼は、初めて「自分の気持ちを伝える」ことができるようになったのだ。
内容は著者が58の質問に答える形になっている。「大きな声はなぜ出るのですか?」「どうして何度言っても分からないのですか?」「みんなといるよりひとりが好きなのですか?」...。すべての答えが「思ってもいなかった」答えで、しかも「そうなのかと納得できる」答えだった。
例えば、大きな変な声を出しているときは、自分が言いたくて話しているのではなくて、反射のように出ているそうだ。迷惑をかけていることも分かっているし、自分も恥ずかしい思いをしている。でも、どうやれば止められるのか分からない。
私たちは、だいたいのことを自分の意思で始めて、自分の意思でやめることができる。だから「やめなさい」と注意する。もしやめ方がわからなかったら?そして「やめ方がわからない」と伝えることもできなかったら?相手がますます怒り出したら?彼の孤独と困惑はどれほどだろう?
「筆談」は彼にとっての光明であるだけでなく、私たちにも多くのことをもたらした。その後にはパソコンで文章が書けるようになり本書ができた。そのおかげで私たちは自閉症の人の心の中を、初めて知ることができた。それがどれだけの恩恵であるかは、世界中で本書が売れていることが示していると思う。
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