満願

著 者:米澤穂信
出版社:新潮社
出版日:2014年月3月20日 発行 
評 価:☆☆☆(説明)

 第27回山本周五郎賞受賞作品。本屋大賞ノミネート作品。著者の作品は単行本は「折れた竜骨」しか読んだことがないのだけれど、新潮社のアンソロジー短編集「Story Seller」シリーズ(annex)の常連なので、短編はいくつか読んだ。本書も6編が収録された短編集で、うち2編は「Story Seller」の3とannexに収録されたもの。

 6編を簡単に紹介する。「夜警」交番勤務の巡査部長の話。その交番に配属され殉職した新人警察官のことを振り返る。「死人宿」山奥の温泉宿にかつての恋人を訪ねた男の話。その宿は自殺の名所となっていた。「柘榴」その美貌と策謀で目当ての男を射止めた女の話。彼女の娘たちも美しく成長するが..。

 「万灯」(Story Seller annexにも収録)バングラデシュで天然ガス開発を目論む商社マンの話。ビジネスはきれいごとだけでは進まない。「関守」都市伝説の取材に訪れたフリーのライターの話。峠のドライブインを営むおばあさんから話を聞く。「満願」(Story Seller 3にも収録)学生時代に世話になった下宿のおかみさんの弁護をする弁護士の話。事件の真相は..。

 ミステリーでは、表面的に見えていることに別の意味があることが多い。本書の6編でもそう。ただ本書の作品に共通して特徴的なことは、その「別の意味」の全ては明らかにならなかったり、結末までは描かれていなかったりすることだ。

 そのため読み終わった後に余韻が残る。あるものはゾクゾクする寒気を伴って、あるものは苦いものを噛んでしまったような後悔と共に。こういうのが好きかどうかは好みによるだろう。

「柘榴」と表題作の「満願」が印象に残った。

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