ドローン・ビジネスの衝撃

書影

著 者:小林啓倫
出版社:朝日新聞出版
出版日:2015年7月30日 第1刷発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 ドローンと呼ばれる小型無人飛行機、そのうち特にビジネス向けのドローンの「これまで」と「これから」を、豊富な事例と共に紹介する本。ドローン業界のキーパーソンへのインタビューを効果的に挟んでいる。

 第1章の「なぜいま「ドローン」か」から始まり、「多様化するドローン活用」「システムに組み込まれるドローン」「ドローン・ビジネスのバリューチェーン」「ドローンと規制」「空飛ぶロボットとしてのドローン」と全6章の構成。

 私は仕事の関わりがあって、この数カ月にドローンに関する書籍を何冊か読んだのだけれど、「ドローンの活用」を多方面から描く本書は、群を抜いて良かった。著者は「POLAR BEAR BLOG」を運営するアルファブロガーで、ドローンの専門家ではないらしい。だからこそ、執筆にあたって多数の取材を行ったことが良かったのだろう。

 ドローンのビジネス利用と聞いて、まず「空撮で使うやつ」と思った人は(私も最近までそうだった)、本書を読んで認識を改めた方がいいかもしれない。例えば、先行する「無人ヘリ」は、農薬散布のために国内で2700機運用され、水稲耕作地の36%をカバーしている。機体側で自動制御が可能なドローンは、さらに広範囲な活用が見込まれているのだ。

 将来に目を向けると、カメラや各種センサーを活用した警備や建築・測量などに使われる。また、高度成長期に建設された橋梁や道路や建物などの、大量の建造物の検査には、なくてはならないものになるだろう。さらに、障害物のない空を飛び同じ場所に留まれるという特性は、通信インフラの整備などに威力を発揮する。

 今はまだ想像もされていない使い道があるかもしれない。新たな用途を考えるには、著者が考案した「空飛ぶロボット」というドローンの位置付け方が役に立ちそうだ。米国では2025年までに10万人以上の雇用を生み出すと試算されている。その周辺にもビジネスが立ち上がってさらに拡大する。

 安全性やプライバシーなどの人権の問題をうまくクリアして、この将来性を実らせて欲しいと思った。

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