世界の果てのこどもたち

著 者:中脇初枝
出版社:講談社
出版日:2015年6月17日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 今年の本屋大賞ノミネート作品。 今年の本屋大賞ノミネート作品。著者の作品を読むのは本書が初めて。

 物語は、太平洋戦争の最中の昭和18年の満州から始まる。その満州で、国民学校(現在の小学校)の1年生の少女3人が出会う。開拓団の一員として高知県から来た珠子。朝鮮中部の農村から来た美子。横浜の貿易商の娘の茉莉。

 この3人が共に過ごすのは、わずか数日ととても短い。本書の大半は、3人の「その後」を物語ったものだ。しかしその短い期間に起きたある出来事を、彼女たちは時折思い出すことになり、さらには、3人の人生に決定的な役割を果たす。

 つらい想いに胸がつぶれそうになった。私は子どもがつらい目にあう話が苦手なのだけれど、本書では3人が容赦ない試練に会う。満州から決死の脱出を試みる珠子。焼け野原に一人放り出された茉莉。謂われない差別にさらされる美子。

 わずか70年前。52歳の私にとっては、自分が生まれる18年(たったの18年!)前に、こんなにつらい出来事が起きていたことと、それを忘却してしまったかのような社会に、後悔とも悲観とも焦燥ともつかない想いがあふれる。

 「世界の果て」とは、3人が出会った満州のことを指しているのかもしれない。でも私は、庇護してくれる人が誰もいない、という珠子たちが置かれた状況を指しているように思った。そんな「世界の果て」にも、一筋の光のように手を差し伸べる人の優しさがあった。それが救い。

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