ギャル男でもわかる政治の話

著 者:おときた駿
出版社:ディスカヴァー・トゥエンティワン
出版日:2016年6月20日 第1刷
評 価:☆☆☆(説明)

 帯には「人気ブロガー議員が教える史上初のエンタメ政治入門書!!」と書いてある。元は「MTRL:明日のモテるを配信中!)」という、男性向けファッションウェブマガジンの企画らしい。試しに覗いてみたけれど、私には縁遠そうなサイトだった。

 東京都議会議員のおときた駿さんが、4人の20代の男性に、政治についてレクチャーする、と言う企画。無粋なことをわざわざ言うと、この4人は「ギャル男」と呼ばれる若者たちで、彼らは、政治のことなんて分かっていないし興味もない、という属性らしい。

 とにかく「分かりやすい」ことが大事で、飽きないようにギャル男くんたちが興味を持ちそうに話さないといけない。そのためには、マンガやアニメやアイドルを例えに使う。時々は「いいところに気づいたね」と褒めたりする。

 一般的には例えを使うと、本来の意味からズレてしまいがちだけれど、うまく例えられていたと思う。「政党」を「ワンピースの海賊団」に、「日本とアメリカ」の関係を「三代目J Soul BrothersとEXILE」に、「社会保障」を「ドラえもん」に。その他にドラゴンボールやスラムダンクやAKB..などが引き合いに出される。

 それなりに面白かった。テーマも「そもそも政治とは?」から、憲法、財政、年金、エネルギー問題、社会保障、表現の自由、と幅広い。4人のギャル男くんたちも、選挙に行くことになりそうだし。こういう政治の本ががあってもいい。

 一方で怖さも感じた。「何も知らない」ことを隠さないギャル男くんたちは、素直になんでも吸収してしまう。自らを「リバタリアン(自由主義者)」と位置付ける著者が説明すれば、その思想を肯定的に捉えてしまう。「終身雇用を廃止して、クビを切っても罪に問われない、とすればいい」なんてことを、あっさり受け入れてしまう。

 公平のために言うと、本書ではこの後に「再雇用のサポートを充実」というフォローがはいる。そこは評価できる。ただし、そうしないこともできたし、フォローの部分がギャル男くんたちの心に残ったかどうかも疑問。若者を集めて、ある思想を植え付けるのはとても簡単なんだと思った。

 人気ブログランキング「本・読書」ページへ
 にほんブログ村「書評・レビュー」ページへ
 (たくさんの感想や書評のブログ記事が集まっています。)

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です