著 者:朝井リョウ
出版社:角川書店
出版日:2011年10月31日 初版発行
評 価:☆☆☆☆(説明)
著者は2009年に「桐島、部活やめるってよ」で、小説すばる新人賞を受賞して翌年にデビュー。2013年に「何者」で直木賞受賞。駆け足でステップアップしている感じだ。本書は、この2つの受賞作の間に出した何作かのうちの1つ。
舞台は連ヶ浜という海辺の街(鎌倉を想起する)の、駅前の商店街から少し離れたところにある喫茶店。お店の名前が「星やどり」。主人公は、このお店を切り盛りする早坂家の6人の子どもたちが順に務める。最初が長男の光彦、続いて三男の真歩、二女の小春、二男の凌馬、三女のるり、最後が長女の琴美。
琴美は宝石店に勤める26歳、既婚、しっかり者。光彦は大学4年生、就活中、ちょっと頼りない。小春とるりは双子の姉妹、高校3年生。小春はメイクがバッチリのギャル風、るりは真面目な優等生、放課後はお店を手伝う。凌馬はおバカで明るい高校1年生。真歩は少し醒めた小学6年生、カメラを首から下げて登校。性格付けがはっきりしている。
それぞれの日常の小さな物語を描きながら、その背景で大きな物語が進む。「星やどり」は、亡くなった建築家の父親が、早坂家の母子に遺したお店で、「大きな物語」はその父の想いを辿る。これはこれで「いい話」なのだけれど、私は「小さな物語」の方に魅かれた。
読み進めていくと、それぞれの性格付けには、意味があることが分かってくる。父親が亡くなった時の年齢が関係していることもあるし、何かの出来事に起因していることもある。それを知ると切なくなってくる。著者は、6人に様々な性格を便宜的に割り振っているのではなくて、その性格にはその役割があってそうしているのだ。
役割だから演じている部分もあって、表面に見える性格とは別の内面の性格も垣間見える。例えば、おバカキャラに見える小春や凌馬は、その内面に澄んだ感性を持っている。こうした人の内面を描くことについて、主人公を入れ替えて互いの視点で互いを描くという手法が、とても冴えを見せている。
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