オールド・テロリスト

書影

著 者:村上龍
出版社:文藝春秋
出版日:2015年6月30日第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 村上龍さんの昨年出版された最新長編。文芸誌の文藝春秋の2011年6月号から2014年9月号まで掲載された同名の作品に、単行本化にあたって加筆したもの。

 主人公はフリーの記者のセキグチ、54歳。「希望の国のエクソダス」に登場した記者の関口と同一人物で、本書の物語は「希望の国の~」から十数年後の出来事とされている。「中学生が集団不登校を起こした事件」として、本書の中で何回か回想される。

 仕事を失い、家族に出て行かれ、荒れた生活をしていたセキグチの元に、元上司から突然に仕事の依頼があった。NHKでのテロの予告があったから、行ってルポを書いて欲しい、という。「そんなバカな話があるか」と思いながらも、セキグチは取材費を欲しさにNHKに出向く。そして予告通りにテロが起きる..。

 「希望の国の~」が中学生による革命の物語であるのに対して、本書が描くのは老人による革命だ。この国の現状を憂い、危機感の醸成のために「日本全体を焼け野原にする」と言う、「怒れる老人たち」による革命。その主体は満州国の生き残りたちらしい。

 読んでいて「面白い」と「もうイヤだ」のせめぎ合いだった。テロの現場やアングラなグループなど、様々な場面の描き方が生々しい。私の心の許容度のギリギリか、時に少し超えてしまう。そこで「もうイヤだ」と感じる。それを苦いもののように飲込んでしまうと「面白い」

 「怒れる老人たち」の着想はとてもいいと思うのだけれど、この描き方では、私はセキグチのようには、老人たちに共感を感じられない。「希望の国の~」は「希望だけがない」というフレーズで有名になったけれど、実は希望を残して終わっている。それに対して本書は、物語の終わりに何か残ったの?と疑問に思ってしまう。

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