アンマーとぼくら

著 者:有川浩
出版社:講談社
出版日:2016年7月19日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 有川浩さんの最新刊。帯には著者自身の言葉として「これは、現時点での最高傑作です」と書いてある。ロックバンドの「かりゆし58」の曲「アンマー」に着想を得たもので、「アンマー」とは沖縄の言葉で「おかあさん」という意味。

 主人公の名前はリョウ。東京で暮らす32歳の男性。久しぶりに母が住む沖縄に帰ってきた。里帰りの目的は「おかあさんのお休みに3日間付き合う」こと。普段は忙しさにかまけて、年に1回日帰りするだけで、実家なのに泊りで帰って来るのは久しぶりだ。

 実は、リョウの実の母親はリョウが子どもの頃に亡くなっている。だからリョウには「二人の母親」がいる。沖縄にいる「おかあさん」と、亡くなった「お母さん」。この物語には主要登場人物がもうひとり。リョウの父で、こちらも何年か前に亡くなっている。

 物語は、リョウと「おかあさん」の3日間に、リョウと父親との思い出が交錯しながら進む。父親のとの思い出とは即ち、リョウと「おかあさん」を結ぶ紐帯でもある。父親の再婚が二人を結びつけたのだし、リョウが東京の大学に進学したために、二人の共通の記憶は、ほとんどが父親がいた時のものだからだ。

 読んでいる途中に「あぁ今回はこの路線か」と思った。著者としては簡単に「近い」などと言って欲しくないかもしれないけれど「旅猫レポート」に近い。「旅猫~」では「思い出の人」を巡ったけれど、本書では、観光地を巡るという形で「思い出」を巡る。巡り終わったその先は...。これ以上は言えない。

 「観光地を巡る」という意味では「県庁おもてなし課」にも近い。リョウたちが立ち寄る、沖縄のあちらやこちらが、とても生き生きと描かれている。読めば、特に残波岬には行きたいと思うだろう。本書中の「雨の日は、よそ行きじゃない土地の顔が見られますよ」は名言だ。沖縄観光の幅がぐっと拡がったに違いない。

 有川さんが大好きな「カッコいいおっさん」は出てこない。「子供みたいなおっさん」なら出てくる。

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