ツバキ文具店

著 者:小川糸
出版社:幻冬舎
出版日:2016年4月20日 第1刷発行
評 価:☆☆☆(説明)

 本屋大賞ノミネート作品。この著者の作品は「食堂かたつむり」に続いて2冊目。

 主人公は雨宮鳩子、親しい人からは「ポッポちゃん」と呼ばれている。20代。鎌倉にある「ツバキ文具店」を、祖母から継いで営んでいる。ツバキ文具店には、文具屋以外にもう一つの仕事がある。代書屋。他人に代わって書や手紙を書く。雨宮家は由緒ある代筆を家業とする家系で、ポッポちゃんはその11代目だ。

 だいたいのことはメールで済ますことができるご時世でも、手紙の代書の依頼がけっこう来る。ただ「きれいな字で」という清書ではなく、手紙の文面を含めてという依頼。それも「お悔やみ」とか「離婚の報告」とか「断り状」とか「絶縁状」とか、かなり難易度の高いものばかりだ。

 来るお客たちは、もつれた事情をそれぞれに抱えている。だからこそ「手紙の代書」などという回りくどいことを頼んでくるのだ。そしてポッポちゃんの手紙は、そのもつれた事情をやさしくほぐす。文面はもちろん、文字の形、使う紙、筆記具、切手までに、心を行き届かせた手紙を作る。

 「食堂かたつむり」の料理が、お客の心を解きほぐすのと似ている。そして主人公自身も、もつれた事情を抱えていて、誰かに解きほぐしてもらうことを待っているのも同じ。読んでいる私の心もほぐれてくる感覚(元々大した事情を抱えているわけではないけれど)。

 それから本書はよくできた鎌倉ガイドになっている。主人公が訪れる神社仏閣はもちろん、食事に行くお店も一部を除いて実在する。映画化されれば「聖地」になるんじゃないの?と思っていたら、4月からNHK ドラマ10で、テレビドラマ化されるらしい。

参考:多部未華子さん主演「ツバキ文具店~鎌倉代書屋物語~」制作開始!

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