図書館の魔女 第一巻

著 者:高田大介
出版社:講談社
出版日:2016年4月15日 第1刷 6月28日 第5刷 発行
評 価:☆☆☆(説明)

 講談社の公募文学新人賞である「メフィスト賞」受賞作品。つまり著者のデビュー作。文庫の帯に「「読書メーター」読みたい本ランキング(文庫部門)日間 週間 月間、すべて1位」と書いてあって、興味をひかれたので読んでみた。

 主人公は、山里で生まれ育った少年のキリヒト。舞台は西大陸と東大陸が狭い海を挟んで対峙する架空の世界。数多くの部族国家が鎬を削りあっているが、この100年ほどは安寧の時を過ごしている。本書は権謀術数が渦巻く世界を描いた、全4巻からなる異世界ファンタジーの1巻目。

 キリヒトは師に連れられて、「一ノ谷」と呼ばれる街にある「高い塔」に来る。「一ノ谷」とは東大陸の西端、諸州諸民族が行き交う要所にあって、この世界に覇権を布く王都。「高い塔」には「図書館」がある。キリヒトはその図書館を統べる「図書館の魔女」に仕えるためにやって来たのだ。

 これ、面白そうだ。図書館には叡智が詰まっている。図書館を観念的に捉えてそういう言い方をすることがある。しかし、本書では「図書館の魔女」は、その叡智を自分のものとしたかのようで、内政外交の意思決定に的確な意見を述べる。先代の「図書館の魔法使い」は、同盟諸州に書簡を送って同盟市戦争を未然に防いだことで知られている。

 「図書館」にこういう意味や役割を持たせた卓越性や、そこに配置した人々の意外性がとても興味を掻き立てる。どういう意外性かは、敢えて書かないけれど、およそその場に似つかわしくない個性が、それぞれの役割を演じる。正直に言って、壮大な遠回りをしている気がするが、それがいいのだろう。

 「面白そうだ」と推察の形にしているのは、まだ分からないからだ。全4巻の1巻目だから、ほとんど何も起きていない。それでもページを繰る手を止めることなく読めた。次巻以降に期待大だ。

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