スノーデン 日本への警告

著 者:エドワード・スノーデン、青木理、井桁大介、ベン・ワイズナーほか
出版社:集英社
出版日:2017年4月19日 発行
評 価:☆☆☆☆☆(説明)

 本書はエドワード・スノーデン氏が滞在先のロシアから参加した、2016年6月に東京大学本郷キャンパスで行われた、シンポジウムの内容を書籍化したもの。言うまでもないけれど、スノーデン氏はアメリカ政府がインターネットを通じた大規模な監視体制を、秘密裏に構築していたことを、資料と共に暴露した人だ。

 シンポジウムのタイトルは「監視の"今"を考える」。第一部がスノーデン氏へのインタビューと質疑応答、第二部が「信教の自由・プライバシーと監視社会 ~テロ対策を改めて考える」と題したパネルディスカッション。本書のそれに沿って2つの章で構成されている。

 スノーデン氏の話はどれも心に響いた。2つ紹介する。一つ目は「秘密主義は政治の意思決定のプロセスや官僚の質を変えてしまう」という話。「政府が安全保障を理由として、政策の実施過程は説明せず、単に法律に従っていると説明するだけとなれば(中略)やがて政府による法律の濫用が始まるでしょう」と語っている。現在の国会の状況を正確に予想していたかのようだ。

 二つ目は「言論の自由とプライバシー」についての話。「言論の自由やプライバシーの権利は社会全体に利益をもたらすものです(中略)異色な存在でなくとも、言論の自由やプライバシーの権利がもたらす利益を十分に享受しているのです」と言う。「普通に暮らしていてやましい事がないなら、共謀罪なんて心配しなくもいい」という考えが誤りだと分かる。

 パネルディスカッションはさらに刺激的だ。スノーデン氏が暴露したのはアメリカ政府の秘密で、幾分「対岸の火事」的な感覚がある。ところが米国と同じように、日本国内でもムスリムに対する監視が行われていたことが分かっている。イスラム教徒である、モスクに出入りしている、という理由だけで、「コンビニで何を買ったか」まで、調査されていた。

 最後に。「共謀罪」に関係して話題になった「国連の特別報告者」について。特別報告者の任命に至る経緯が書いてあった。2013年に「デジタル時代のプライバシー」という国連総会決議があり、各国の決議の実施状況を調査するために任命されている。決議にはもちろん日本も賛同している。国連からしてみれば「個人の資格で..」などと、どの口で言うのか?ということだろう。

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