日本をダメにしたB層の研究

書影

著 者:適菜収
出版社:講談社
出版日:2015年11月1日 発行
評 価:☆☆(説明)

 ここのところ政府にとって都合の悪いことが次々と話題になっている。その割に支持率が下がらない。「どうして?」と思っているうちに「B層」という言葉が頭に浮かんだ。「たしか「B層の研究」っていう本があったよな」と思って、本書を探し出して読んでみた。

 「B層」というのは、2005年のいわゆる郵政選挙の時に、広告会社が作成したコミュニケーション戦略による概念。「構造改革に肯定的か否定的か」と「IQが高いか低いか」の2つの軸で、国民をABCDに分類し、「構造改革に中立から肯定的でIQが低い」層のことを「B層」と名付けている。

 国民の多数がこの層に属していて、この層は深く考えることなく、印象で物事を決めてしまう。だから「郵政民営化に賛成か反対か」「改革派か抵抗勢力か」と、問題を単純化してして、テレビで大量に投げかける、というのがその戦略。

 そうすると、具体的なことはよく分からないけれど(「改革派」の方がいい感じがするので)「郵政民営化賛成!改革派ガンバレ!」となって、その結果として自民党は圧勝、というワケ。「国民をバカにするな!」と憤りを感じるけれど、戦略通りに自民党は圧勝したわけだから、憤るだけ虚しいというものだ。

 ちょっと「B層」の説明が長くなってしまった。それで本書は、タイトルからして「日本をダメにした」と形容しているわけで、その「B層」を「研究」と称して、徹底的にバカにしている。それだけでなく「B層」を支持基盤にした、小泉さん以降の歴代の首相を、党を問わずバカ呼ばわりする。

 いいことも言っているし、なかなか鋭い考察もあるし、著者は哲学や古典にも通じているようだ。しかし、こんなふうに他人を順番に俎上に載せて、次々と切って捨てているのでは、飲み屋で吠えている酔客のようで、心情的に距離を置きたくなった。

 繰り返すけれど、いいことも言っているし、なかなか鋭い考察もある。積極的にはおススメしないけれど、私が上に書いたことを承知した上で、それでも興味があれば、読んでみてもいいかもしれない。

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