「超」入門 失敗の本質

著 者:鈴木博毅
出版社:ダイヤモンド社
出版日:2012年4月5日 第1刷 2012年7月1日 電子版 発行
評 価:☆☆☆☆(説明)

 名著と言われる「失敗の本質」を解説した本。「失敗の本質」を、戦略論であり「日本人特有の文化論」でもあると捉えて、そこから抽出した「エッセンス(日本語に訳すと「本質」。つまり「失敗の本質」の本質)」を、今日的な事例も使って分かりやすく説明してある。

 抽出されたエッセンスは全部で23個。それを「戦略性」「思考法」「イノベーション」「型の伝承」「組織運営」「リーダーシップ」「日本的メンタリティ」の7つに分類して、それぞれに一章を割り当てて「失敗しないための処方箋」を描く。

 例えば第一章のタイトルは「なぜ「戦略」が曖昧なのか?」。著者は、「失敗の本質」を読んで最初に感じる点として、「日本軍の戦略があまりに曖昧だった」と言う。そして「目標達成につながらない「勝利」が多い」ことを指摘する。個々の戦闘、戦術では秀でた点もあって、勝利することも多いのだけれど、それが「戦争の勝利」につながらない。

 その原因は、グランドデザインがないこと、そのために目指すべき「指標」が間違っていること、とする。日本軍で言えば「戦争の勝利」をどのように描いていたのか不明だ。「どこかの戦場で大勝利すれば勝敗が決まる」という「決戦戦争」思想があったようだけれど、勇ましいだけで曖昧さは免れない。

 これを著者は現代的な事例に当てはめて見せる。例えば、インテルはマイクロプロセッサの事業展開にあたって「活用しやすさ」を指標と定め、マザーボードを開発した。日本企業を含む他の企業は「処理速度」を指標にして高速化を競った。市場シェアを見ると、どちらの指標が事業の成功につながったかは明らかだ。

 このような感じでとてもよく分かりやすい。「失敗の本質」を読んで、ここまで読み取れる人はそうはいないだろう。むしろ「失敗の本質」にはここまで書かれていない。上に「(失敗の本質」の)エッセンスを、今日的な事例も使って..」と書いたが、実体としては「今日的な事例を、(「失敗の本質」の)エッセンスを使って」分かりやすく説明した本だ。

 つまり主客が転倒しているのだけれど、これでいいのだ。実際のところ私たちにとって大事なのは、今日的な事例の方であり、それを今後の自分の判断に生かすことだから。 

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